厚生労働省が公的年金制度の財政検証結果を発表したことで、将来の給付水準が話題になっていますね。
ところで、年金について個人で対策できることはあるのでしょうか?
実は最も簡単に月当りの年金額を増やす方法は、受給開始年齢を遅らせることです。
年金の繰下げ受給制度について解説します!
年金は最長5年間繰り下げ受給が可能
日本の年金制度では、国民年金(老齢基礎年金)、厚生年金(老齢厚生年金)とも原則として65歳から支給が開始されます。
ただし、本人からの申し出によって支給開始時期を遅らせる「繰り下げ」、もしくは支給開始時期を早める「繰り上げ」が可能です。
年金財政に寄与する部分も大きいことから、繰り下げ受給については、繰り下げ後の受給額を増額するボーナス措置が取られているんです。
※厚生年金から支給される老齢給付のなかで、60歳から64歳までに支給される老齢給付を「特別支給の老齢厚生年金」と呼びますが、こちらは「繰下げ制度」はありません。
1か月受給を遅らせるごとに年金受給額は0.7%増加
増額率=(65歳に達した月から繰下げ申出月の前月までに月数)×0.007
日本年金機構から示されている計算式がこちらですが、簡単に言うと、1か月受給を遅らせるごとに年金受給額は0.7%増加するということです。
最長5年間繰り下げ可能で最大42%増加
請求時の年齢 | 増額率 |
---|---|
66歳0ヵ月~66歳11ヵ月 | 8.4%~16.1% |
67歳0ヵ月~67歳11ヵ月 | 16.8%~24.5% |
68歳0ヵ月~68歳11ヵ月 | 25.2%~32.9% |
69歳0ヵ月~69歳11ヵ月 | 33.6%~41.3% |
70歳0ヵ月~ | 42.0% |
(出典:日本年金機構『老齢基礎年金の繰下げ受給』より)
日本年金機構が示している一覧表を見ると、最大42.0%増加することが分かります。
42.0(%)を60か月(5年)で割ると、0.7となりますから、検算してみても合致していますね。
厚生労働省が発表した公的年金制度の財政検証結果では、2019年度のモデルケースとして次のような試算が出されています。
現役世代の所得35.7万円に対して、年金支給額22万円(所得代替率61.7%)
年金の繰り下げ受給によって、最大42.0%増となるケースを試算してみましょう。
現役世代の所得35.7万円に対して、年金支給額31.24万円(所得代替率87.5%)
現役世代の収入のほぼ9割に達していて、年金受給額としてかなり改善していることが分かります。
【逆パターン】年金を繰り上げ受給するとどうなるの?
年金は繰り下げ受給とは別の方向で、繰り上げて受給することも可能です。
繰り下げ受給の場合はボーナス措置が取られますが、繰り上げ受給の場合にはペナルティ的な措置が取られることになります。
1か月受給を早めるごとに年金受給額は0.5%減少
減額率=0.5%×繰上げ請求月から65歳になる月の前月までの月数
日本年金機構から示されている計算式がこちらですが、簡単に言うと、1か月受給を早めるるごとに年金受給額は0.5%減少するということです。
最長5年間繰り上げ可能で最大30%減少
請求時の年齢 | 0カ月 | 1カ月 | 2カ月 | 3カ月 | 4カ月 | 5カ月 | 6カ月 | 7カ月 | 8カ月 | 9カ月 | 10カ月 | 11カ月 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
60歳 | 30.0 | 29.5 | 29.0 | 28.5 | 28.0 | 27.5 | 27.0 | 26.5 | 26.0 | 25.5 | 25.0 | 24.5 |
61歳 | 24.0 | 23.5 | 23.0 | 22.5 | 22.0 | 21.5 | 21.0 | 20.5 | 20.0 | 19.5 | 19.0 | 18.5 |
62歳 | 18.0 | 17.5 | 17.0 | 16.5 | 16.0 | 15.5 | 15.0 | 14.5 | 14.0 | 13.5 | 13.0 | 12.5 |
63歳 | 12.0 | 11.5 | 11.0 | 10.5 | 10.0 | 9.5 | 9.0 | 8.5 | 8.0 | 7.5 | 7.0 | 6.5 |
64歳 | 6.0 | 5.5 | 5.0 | 4.5 | 4.0 | 3.5 | 3.0 | 2.5 | 2.0 | 1.5 | 1.0 | 0.5 |
(出典:日本年金機構『老齢基礎年金の繰上げ受給』より)
日本年金機構が示している一覧表を見ると、最大30.0%減少することが分かります。
30.0(%)を60か月(5年)で割ると、0.5となりますから、検算してみてもこちらも合致していますね。
年金の繰り下げ受給によって、最大30.0%減となるケースを試算してみましょう。
現役世代の所得35.7万円に対して、年金支給額15.4万円(所得代替率43.13%)
現役世代の収入の4割近くまで減少することになり、年金受給額としてかなり厳しいことが分かります。
【年金受給額を増やす方法】年金の繰下げ受給で最大42%年金額が増額されます!まとめ
年金受給額を増やす方法として、年金の繰下げ受給で最大42%年金額が増額されることをお伝えしてきましたが、いかがでしたか?
- 厚生労働省が公的年金制度の財政検証結果を発表したことで、将来の給付水準が話題になっています。
- 最も簡単に月当りの年金額を増やす方法は、受給開始年齢を遅らせることです。
- 支給開始時期を遅らせる「繰り下げ」受給の場合、1か月受給を遅らせるごとに年金受給額は0.7%増加し最大42%増加します。
- 支給開始時期を早める「繰り上げ」受給の場合、1か月受給を早めるるごとに年金受給額は0.5%減少し最大30%減少します。
- 「繰り下げ」受給を最大限活用した場合、現役世代の収入のほぼ9割に達し、年金受給額としてかなり改善します。
年金は終生支給されるものですので、支給開始時期を遅らせる「繰り下げ」受給を選択した場合の改善効果は非常に大きいと言えます。
とは言っても、実際には健康寿命との兼ね合いもあり、十分身体が動くうちに年金をもらう「繰り上げ」受給の方がより充実した人生となるのではないかという意見もあります。
結局のところ、人生観にも左右される要素も大きく、人生の後半戦に入ったぐらいのタイミングで一度しっかり考えておく必要があるように思います。
そのためにも、まず重要なのは制度をしっかり理解することです。
『お金節約.com』編集部でも、年金問題については折に触れてお伝えして行こうと思います。