日本時間9月18日早朝、アメリカが中国からの輸入品2千億ドル(約22兆円)を対象に制裁関税を発動すると発表!
日本でもニュース速報でテロップが流れるなど、大きく報道されていました…。
アメリカと中国の貿易戦争とも言われる今回の対立。
米中の貿易摩擦は激しさを増していて、今回の制裁が第3弾となり、9月24日にも発動すると報道されています。
米中の貿易摩擦は日本にも影響あるの?そもそも国際貿易ってどうしてメリットがあるの?
国際貿易の基礎知識も含めて解説します!
(画像出典:Amazon『ドナルド・トランプ帽子』)
アメリカが中国に対して第3弾の制裁関税を発動
日本時間2018年9月18日早朝、アメリカが中国からの輸入品2千億ドル(約22兆円)を対象に、第3弾の制裁関税を9月24日に発動すると発表しました。
米国通商代表部(USTR)が作成した関税の適用対象となる最終品目リストには、スポーツ用品や服飾品、食料品など一般消費者に身近な製品も含まれています。
アメリカと中国の貿易戦争?などと言われたりもしていますが…。
今回の流れをちょっと振り返ってみましょう。
アメリカは何で怒っているの?
2018年2月6日に、米商務省は2017年の貿易統計を発表しています。
アメリカの2017年の物品の貿易赤字は7,962億ドル。そのなかでも、対中国の赤字が3,752億ドルと過去最大に膨らんだことが判明!
アメリカの貿易赤字の約半分は、対中国の赤字なわけです。
アメリカのトランプ政権は、貿易不均衡是正を公約に掲げていて、不公正な貿易慣行を継続する国からの輸入品には『報復関税』を課すと発言していました。
『Make America Great Again!』という、アレですね…。
アメリカの動きは『中国の報復に対する、アメリカの報復』
アメリカのトランプ政権は、既に2018年7月~8月にかけて、2回に分けて計500億ドル分に25%の制裁関税を課しています。
中国は米国産大豆などに同程度の規模の報復関税で対抗!
今回の第3弾の制裁関税は「中国の報復に対する、アメリカの報復」という位置づけです。
やりかえす中国、そこにさらに反撃するアメリカ…。
超大国同士が報復し合う状況にまで発展したことで、貿易戦争勃発!?と話題になっているわけですね。
第3弾を発動すれば制裁関税は合計2500億ドル分となり、中国からの年間輸入総額(約5千億ドル)の半分に相当。
さらに残りの額も対象にした第4弾も検討しているということです。アメリカは、中国からの輸入品すべてに制裁関税を課す可能性があるわけです。
(出典)日本経済新聞2018年9月18日『米、対中関税第3弾を24日発動』
米中の貿易摩擦は日本にも影響あるの?
米中の貿易摩擦の影響ですが、日本経済への影響も少なくないと懸念されています。
それはどうしてなのでしょう?
日本はアジア地域のサプライチェーン内にある
中国製品は日本でもよく見かけますよね。
100円ショップで売っているような簡単なものから、最近ではHUAWEIなど中国製のスマホも多く見かけるようになりました。
iPhoneだって中国で生産されているという話はよく知られています。
とはいっても、スマートフォンのような高機能の製品が、部品から全て中国で生産されているわけではありません。
日本や韓国、台湾などで生産された部品が一度中国に輸出され、中国で最終製品に組み立てられた上で、アメリカなどの最終的な消費地に輸出されているかたちです。
このため、アメリカの対中国赤字は、実質的にはアジア地域のサプライチェーン全体に対する赤字と考えることができるのです。
みずほ総合研究所『米中貿易摩擦は日本経済にどのような影響を及ぼすか』
中国への輸出減をアメリカへの輸出増で補うことは難しい
アメリカが中国へ制裁関税を課すことになれば、最終的な製品の生産地を中国からアメリカへ移行する動きが出てきます。
日本などの部品の輸出国では、部品の輸出先をアメリカに切り替えることも検討する企業もでてくるでしょう。
ただしその場合、民間の研究では、輸送コストなどの問題から、輸出というよりは現地生産を増やすかたちで対応することになるだろうという見方が中心です。
回りまわって、日本人の雇用を減らすことになる…。という可能性が高い、と指摘されている感じですね。
日本銀行の黒田総裁も、米中の防衛摩擦によって、日本経済が大きな影響を受ける可能性を示唆しています。
ロイター2018年6月21日『日米欧中銀トップ、貿易戦争による世界経済への影響を危惧』
そもそも国際貿易のメリットとは
そもそも何で国際貿易しているの?と言えば、お互いにとって、その方がトクになるから…。です。
国際貿易のメリットを非常に簡単に示す概念として、『比較優位』という考え方があります。
『比較優位』とは、イギリスの経済学者デヴィッド・リカードが発見した、自由貿易のメリットを示す基本原理です。
『比較優位』は貿易のメリットを示す基本原理
『比較優位』の考え方はすごくシンプルなので、解説してみましょう!
「より子国」と「ふみ子国」という2つの国があり、お互いに、リンゴとオレンジを生産していると仮定します。生産状況は次の通りです。
労働者 | リンゴ | オレンジ | |
より子国 | 100人 | 40 | 60 |
ふみ子国 | 100人 | 30 | 20 |
合計 | 200人 | 70 | 80 |
「より子国」は優秀なので、労働者100人で、リンゴを40、オレンジを60生産していますw
「ふみ子国」はぐーたらなので、労働者100人で、リンゴを30、オレンジを20生産しています…。
世界全体で見ると、労働者200人、リンゴの生産量70、オレンジの生産量80ですね!
『絶対優位』と『比較優位』の違い
労働者を均等に分配している場合の生産性をみてみましょう。
リンゴの生産性 | オレンジの生産性 | |
より子国 | 0.8 | 1.2(比較優位) |
ふみ子国 | 0.6(比較優位) | 0.4 |
「より子国」は、労働者1人で、リンゴを0.8個、オレンジを1.2個、生産できます。
「ふみ子国」は、労働者1人で、リンゴを0.6個、オレンジを0.4個、生産できます。
「より子国」は、リンゴの生産でもオレンジの生産でも、「ふみ子国」よりも生産効率が良く、優れています。これを『絶対優位』といいます。
その一方で、
- 「より子国」は、オレンジの生産性により優れていること
- 「ふみ子国」は、リンゴの生産性により優れていること
これも見て取れます。この相対的に優れている状況を『比較優位』といいます。
「より子国」は、オレンジの生産に『比較優位』を持っていて、「ふみ子国」は、リンゴの生産に『比較優位』を持っています。
『比較優位』=得意分野、ということですね!
『比較優位』に基づいて貿易を行うと総生産量が増加
ここで、「より子国」は労働力の8割を『比較優位』を持つオレンジの生産に、「ふみ子国」は全労働力を『比較優位』を持つリンゴの生産に振り向けます。
すると、次のような結果が得られます。
労働者 | リンゴ | オレンジ | |
より子国 | 100人 | 16 | 96 |
ふみ子国 | 100人 | 60 | 0 |
合計 | 200人 | 76 | 96 |
最初の状態と比較すると、メリットがはっきりしますね。
リンゴの増加量 | +6 |
---|---|
オレンジの増加量 | +16 |
異なる二か国が、それぞれの得意分野に生産力を振り向けて生産・貿易を行うと、結果的に世界全体の生産量が増加するわけです!
これがデヴィッド・リカードが発見した『比較優位』の原理です。
とてもシンプルな原理ですが、今でもなお、自由貿易体制を支える、もっとも基本的な概念なんですよ♪
デヴィッド・リカード(著)『経済学および課税の原理』
米中の貿易摩擦は日本経済にも影響あるの?【国際貿易の基礎知識】まとめ
- 9月18日、アメリカが中国に第3弾の制裁関税を発動すると発表!
- アメリカの貿易赤字の半分が対中国向けのものという背景がある。
- 日本経済への影響も避けられないという見方が主流ですが…。
- 自由貿易体制を支える、もっとも基本的な概念として『比較優位』という考え方がある。
- 『比較優位』は、それぞれの国が得意分野に注力することによってメリットが得られることを説いた概念。
Amazonで売っている『ドナルド・トランプ帽子』は、さすがにMade in USAの様子。
でも、お値段が…。2018年9月18日時点で、7,573円もするんですよ!
やはり比較優位に基づいて自由貿易した方が良いのでは…。汗