2019年10月1日から消費税が10%に上がることが決まっています。
同時に、消費者の負担を軽くするための軽減税率制度が導入される方針です。
政府はさらに追加対策として『ポイント還元策』の導入を検討しているのですが…。
軽減税率制度に加えてポイント還元策を導入すると、10月1日以降の税率は何と5種類になるんです!
販売現場でも混乱を招くのではないかと、危険性が指摘されているんですね。
消費税対策のポイント還元策で、10月から税率が5種類になる状況をレポートします!
消費税の増税とその対策
2019年10月1日から、消費税は10%に増税されます。
同時に、軽減税率制度が導入。「酒類・外食を除く飲食料品」と「定期購読契約が締結された週2回以上発行される新聞」は、消費税率は8%で据え置きです。
さらに加えて、消費増税の影響で消費が減ってしまうことへの対策、つまり景気対策としてポイント還元策の導入が検討されています。
それぞれ、決定済みなのか、まだ未決定なのか、ステータスが異なるものですので、まずはその点を整理してみましょう。
消費増税をめぐる現在の状況
位置付け | 具体策 | ステータス |
消費税率の変更 | 消費税率10% | 決定 |
課税対象の設定 | 軽減税率制度 | 決定 |
景気対策 | ポイント還元策 | 今期国会で議論 |
まずそもそもの消費税率の変更(増税)については、平成27年(2015年)4月の消費税法の一部改正により、法律として成立しているものですので、基本的に決定事項です。
軽減税率制度の導入についても、税制抜本改革法第7条に基づく消費税率引上げに伴う低所得者対策として定められているものですので、こちらも基本的に決定事項です。
ポイント還元策については、政府による消費税増税に伴う景気対策として、平成31年度予算案に含まれているものです。
1月末から開催されている第198回通常国会にて、この予算案が議論されている段階ですので、ポイント還元策については厳密には未決定となります。
軽減税率制度については、次の記事を参考にしてください。
消費増税対策「ポイント還元策」の内容
対象事業者 | ポイント還元率 |
中小企業の小売、飲食、宿泊など | 5% |
大手系列のチェーン店(コンビニ、外食、ガソリンスタンドなど) | 2% |
大企業の小売業(百貨店など)、病院、住宅など一部除外業種 | 0% |
ポイント還元策については、中小企業支援としての側面もあるので、基本的に中小企業に有利な制度案となっています。
最大の5%が適用されるのは、中小企業基本法の定義に当てはまる事業者に限られ、小売業の場合は「資本金5千万円以下または従業員50人以下」となります。
中小企業の定義にあてはまれば、業種については飲食や宿泊などでも適用可能。
ポイント還元の対象となる支払方法は、いわゆるキャッシュレス決済(クレジットカード、電子マネー、QRコード決済、バーコード決済等)となる見込みです。
コンビニなどのチェーン店を2%としたのは、直営店(大企業に分類)とフランチャイズ店(中小企業に分類)が混在しているためで、国の補助としては中間の2%に抑えたかたちです。
期間限定の施策として考えられていて、2019年10月1日の消費増税実施から9カ月間を予定しています。
「ポイント還元策」の対象となるキャッシュレス決済14社が内定
決済区分 | 事業者名 |
クレジットカード | 三菱UFJニコス |
三井住友カード | |
UCカード | |
JCB | |
電子マネー | WAON |
nanaco | |
Suica | |
楽天Edy | |
汎用サービス | 楽天 |
スマートフォン決済サービス | オリガミPay |
Line Pay | |
PayPay | |
決済代行 | Coiney |
Square |
(報道内容を基に『お金節約.com』編集部作成)
ポイント還元策の適用対象となる決済事業者は、昨年末の段階で14社が内定しています。
クレジットカード会社は、カードの発行会社(イシュア)としてだけでなく、取次事業者(アクワイアラ)としても機能しています。
例えば、三井住友カードは、もちろん三井住友ブランドのクレジットカードの発行会社でもありますが、国際ブランドVISAの取次も行っているんですね。
三井住友カードを経由した、VISAクレジットカードの利用がポイント還元策の適用対象となるかどうかについては、現時点で明確ではありません。
「ポイント還元策」導入で消費税率は5種類に
購入場所 | 購入物品 | 消費税率 | ポイント還元 | 消費税率(実質) |
大企業 | 軽減税率の対象外 | 10% | 0% | 10% |
軽減税率の対象 | 8% | 0% | 8% | |
チェーン店 | 軽減税率の対象外 | 10% | 2% | 8% |
軽減税率の対象 | 8% | 2% | 6% | |
中小企業 | 軽減税率の対象外 | 10% | 5% | 5% |
軽減税率の対象 | 8% | 5% | 3% |
(各法案を基に『お金節約.com』編集部作成)
ポイント還元策が導入された場合の、実質消費税率を表にまとめてみました。
単純に言うと、軽減税率が適用されるかどうかで2種類あり、ポイント還元が3種類ありますので「2x3=6通り」、ここから税率重複分を引いて合計5種類となります。
【問題1】現時点では不明確な部分が非常に多い
ポイント還元策については、現時点では明確になっていないことが非常に多い状況です。
クレジットカード会社が取次事業者(アクワイアラ)として機能している場合にどうするのか?という点は既にお伝えしましたが、それ以外にも考えられる問題点はたくさんあります…。
中小企業の定義は?
そもそも中小企業をどう定義するのかという問題があります。
例えば、原案に見られるように、中小企業を「中小企業基本法の定義」に従って定めてしまうと、日本を代表する巨大小売業ヨドバシカメラは、資本金3000万円なので中小企業区分となってしまいます…。
コンビニ決済はどうなる?
コンビニ決済は決済代行サービスとして広く普及していますが、商品の販売元がコンビニというわけではありません。
コンビニ決済を利用した際に、ポイント還元策はコンビニの還元率が適用になるのか、販売元の還元率が適用されるのか。そして、それをどうやって区別するのか?このあたりも明確にはなっていません。
ショッピングモールや駅ナカ出店の場合はどうなる?
総合的に言うと、大企業に場所を提供してもらって、中小企業が販売しているという形態の場合どうなるのか?という点も明確でない部分です。
こうした販売形態の場合、レジの形式が、ショッピングモール等に提供してもらう共用レジの場合と、自前レジの場合が混在しているのも事態を複雑にすると思います。
Amazon(アマゾン)はどうなる?
汎用サービスに楽天の記載があるのは、楽天市場で購入した商品はポイント還元策の対象になると考えて良いのか?という点も明確でない部分です。
総合通販サイトのもう一方の雄、Amazon(アマゾン)はどうなるのか?というのも、非常に気になりますよね。
【問題2】非常に複雑な制度を消費者が正しく理解できるか
今回のメインテーマではないので、あえて深くは説明していませんが、そもそも軽減税率制度の対象になるかどうかも複雑になるわけです…。
軽減税率が適用されるかどうかで、まず消費税率8%と10%の2種類に分岐します。
ポイント還元策を追加すると、ここからさらに、購入場所による区分、支払い方法による区分が加わってきます。
1つの商品に対して、合計5種類の消費税率が成立する可能性について、消費者が正しく理解することはかなりハードルが高いのではないでしょうか…。
他にも、システム的に間に合うのかとか、問題となりそうな点は書き切れないぐらいありますが、キリがありませんので代表的な数点に留めます。
消費税の増税対策『ポイント還元策』の仕組みが複雑すぎる!?まとめ
消費税の増税対策『ポイント還元策』の仕組みと問題点について解説しましたが、いかがでしたか?
- 2019年10月1日から消費税が10%に上がります。
- 同時に、軽減税率制度の適用が開始されます。
- さらに、景気対策として『ポイント還元策』が検討されています。
- 現在検討されている施策をすべて実施した場合、消費税率は5種類存在することになります。
- 非常に複雑な制度を、販売側・消費者側双方に、どう周知させていくのか、解決すべき問題は大きい状況です。
今回の消費増税を巡っては、派生して生じる問題が非常に大きいので、かなりの混乱が発生するのではないでしょうか…。
例年だと年度末、3月末頃に予算成立となるわけですけれど、それを待っていると小売業のシステム対応とか間に合わないですよね。
多くの関係者が、見込みで動くしかない状況なのだろうと思います。
普段の生活に直結する部分が大きいものですから、『お金節約.com』編集部でも、消費増税関係は継続して追っていきます!