2019年4月1日から「働き方改革関連法案」が施行されます!
さまざまな点で私たちの働き方が変化することになりますが…。
有給休暇の取得が義務化されることも大きな改善ポイントの一つです!
罰則規定も設けられているので、多くの企業で制度対応を進めている最中かも知れません。
2019年4月1日から有給休暇取得の義務化制度がスタートすることについて解説します!
日本の有給休暇取得率・有給取得日数ともに世界最下位
働き方改革関連法案の主要テーマの一つが、有給取得率の向上です。
課題と考えられているからには、現状の問題が大きいということですよね…。
実際、日本の有給取得率・取得日数は世界でも最低レベルという調査があるんです。
エクスペディアでは有給休暇の国際比較調査を毎年実施
世界最大級の総合旅行サイト・エクスペディアの日本語サイト「エクスペディア・ジャパン」では、有給休暇の国際比較調査を毎年実施しています。
最新の調査は2018年のもので、世界19ヶ国の18歳以上の有職者男女計11,144名を対象とした大規模調査です。
有給取得に対する日本人の意識が、世界的にはかなり異色なことが良くわかる比較調査になっているんですよね…。
まずは調査内容を超簡単にまとめてご紹介します!
日本の有給取得率は世界最低水準
エクスペディア・ジャパンの「世界19ヶ国 有給休暇・国際比較調査2018」は、グラフが非常に分かりやすいので、そちらの画像を添付して解説しますね!
人手不足で現場が回らない、有休を取得されると上司も困る、部下も最悪感を感じてしまう。結果的に有給取得率が低いままで一向に改善されない…。
典型的な負のスパイラルに陥っている状況が良く分かります。
日本人の有給取得率は調査対象国中で最下位
日本人の有給取得率が低いのは昔から変わらない傾向
日本人は有給取得に罪悪感を感じている人が最も多い
日本では上司も有給取得に協力的では無い
日本が有休をとらない最大の理由は人手不足
年次有給休暇の時季指定義務が新設
調査結果を見ると、改めてがっかりする感じはありますけれど、「何となく休めない状況があるよね…」というのは、日本で働く多くの人が感じているのではないでしょうか。
日本政府が進める『働き方改革』の中でも、有給取得率の向上は主要なテーマとして考えられています。
制度改正のポイントは使用者が有給取得時期を指定して付与することを「義務化」したこと
今回の制度改正のポイントは、有給休暇の取得に際して、労働者の申告だけでなく、使用者側に有給休暇の取得を命じる義務を課したことです。
現在は、使用者(働く側)が〇月△日に休みたいということを、使用者(上司)に伝えて有給休暇を取得するという流れのみです。
これだと、どうしても「有給取得を言い出し難い…」という気持ちの部分での問題は解決できないと考えられたのですね。
このため、使用者側が、〇月△日に休みなさいと伝えることを義務化することで、有給休暇のうち一定割合は確実に消化されるようにしたのです。
『お金節約.com』編集部におけるBefore/After
『お金節約.com』編集部の状況で、ものすごく簡単にBefore/Afterを説明すると、次のような感じになります。
2019年3月31日までの有給取得は100%申告制
無言の圧力
空気を読んであきらめ…
2019年4月1日からは使用者側に有給取得の付与義務も課される
一定日数休ませることが義務となる
一定の割合は確実に有給消化できるようになる
年次有給休暇の新ルールの対象者
年次有給休暇取得の新ルールの対象となるのは、年次有給休暇が10日以上付与される労働者(管理監督者を含む)です。
次に、基準となる年次有給休暇が10日以上付与される条件を見てみましょう。
正社員の場合
- 雇用開始から6か月間継続して勤務していること
- 全労働日(出勤義務のある日)の8割以上出勤していること
この2つの条件を満たせば、有給休暇が10日間支給されます。
6か月間を超えて勤務が継続した場合は、次の表の通りに有給休暇が付加され、最終的に6年6カ月で最高の20日の有給休暇が付与されます。
継続勤務年数 | 0.5年 | 1.5年 | 2.5年 | 3.5年 | 4.5年 | 5.5年 | 6.5年以上 |
法定最低付与日数 | 10日 | 11日 | 12日 | 14日 | 16日 | 18日 | 20日 |
(労働基準法施行規則第72条より)
パート社員の場合、週5日以上勤務なら正社員と同じ
誤解している人も多いのですが、パート社員でも有給休暇は付与されます。
週5日以上の労働日であれば正社員と同じ日数が発生します。有給は労働日数によって決まるためですが、この点は誤解している人がすごく多いので気を付けましょう!
週5日間、1日1時間だけ勤務しているパート社員の場合でも、全労働日の8割以上の出勤を満たした場合、正社員と同じく10日の有給休暇が発生するんです。
このケースの場合は有給休暇として与えられる「時間数」を合計すると、1時間x10=10時間だということです!
パート社員の場合、週4日以下の勤務なら比例付与
週の所定労働日数が4日以下で、かつ週の労働時間が30時間未満のパート社員については、有給の付与日数が比例して少なくなります。これを「比例付与」といいます。
比例付与の計算表は次の通りです。
週所定労働日数 | 年所定労働日数 | 継続勤務年数 | ||||||
0.5年 | 1.5年 | 2.5年 | 3.5年 | 4.5年 | 5.5年 | 6.5年以上 | ||
4日 | 169日 – 216日 | 7日 | 8日 | 9日 | 10日 | 12日 | 13日 | 15日 |
3日 | 121日 – 168日 | 5日 | 6日 | 6日 | 8日 | 9日 | 10日 | 11日 |
2日 | 73日 – 120日 | 3日 | 4日 | 4日 | 5日 | 6日 | 6日 | 7日 |
1日 | 48日 – 72日 | 1日 | 2日 | 2日 | 2日 | 3日 | 3日 | 3日 |
(労働基準法施行規則第24条の3より)
この表を見ると、週に1日だけ勤務しているパート社員の場合でも年次有給休暇が発生することが分かります。
例えば、週1日勤務で6カ月間継続勤務し、全労働日の8割以上の出勤を満たした場合については、6か月後に1日の年次有給休暇が発生することになるんです!
使用者が有休取得日の指定する「計画付与」は5日を超える部分が対象
従業員が一斉に同じタイミングで有給休暇を取得されると、営業が回らなくなってしまうという状況もありますよね。この場合、会社と労働者の代表が協定を結んで有給休暇の「計画付与」を実施することもできます。
計画付与は無制限に設定できるというわけでは無く、計画付与のの対象となる有給休暇の日数は、個人の持ち日数の5日を超える部分となることが定められています。
逆に言うと、個人の権利として、最低5日は自由に消化できる有給休暇を残しておかなければならないということになります。
使用者は有給休暇の取得目的を聞いてはならない
労働者が年次有給休暇をどのような目的で利用しても、使用者(会社側)は有給休暇の使用目的については干渉することはできません。
これは最高裁判所判決がすでに確定している事案なのですが、判例には、成田空港問題がちょっと関わっています…。
成田空港反対現地集会に参加するために有給休暇を取得することを申請した社員に対して、使用者側が違法行為に及ぶ恐れがあることを危惧してその申請を認めず、その判断の正当性が最高裁まで争われた、というケースがあるんですね。(弘前電報電話局事件)
最終的に、原告側(社員側)の勝訴で終結しており、「労働者が年次有給休暇を何に使うかについては使用者が干渉することができない」この基本ルールを説明する時の判例として、用いられているケースです。
有給休暇を取得するときに、申請用紙があって「利用目的」を記入するという会社もまだあるかもしれないですね。上司によっては、有給休暇を何に使うのか、聞いてくる場合もあるでしょう。こうした場合には、原則的には、回答する必要は無いと考えられます。
【備考】労働基準法第39条第4項但し書きには「事業の正常な運営を妨げる場合」には、時季の変更を求めることができるとされています。弘前電報電話局事件のケースをすなおに理解すると、いずれにしても労働者の年次有給休暇申請は理由を聞かずに受け付ける必要がある。日程上の問題が無ければ単に受理して完了。提示された日程で、著しく事業の運営に支障を与えることが明らかな場合にはじめて、労働者との協議を行うべき。ということかと思います。
違反した使用者(企業)は労働基準法違反として30万円以下の罰金刑の対象となる
今回の年次有給休暇の新ルール施行は、違反した場合、労働基準法違反として30万円以下の罰金刑の対象となることも明確に定められています。
罰則規定が明らかとなっていることは、働く側にとっては大きいと言えます。
自分が勤務している企業が対応してくれない場合は労働基準監督署に相談すると良いです
年次有給休暇の新ルール施行は、改正法案が成立して、施行日(2019年4月1日)も確定しているものですので、企業側は対応せずに済ませることができません。
2019年4月1日移行、自分が勤務している企業が対応してくれない場合は、各地の労働基準監督署に相談に行くことをおすすめします。
厚生労働省へ匿名での通告も可能
自分が働いている企業が、明らかに対応していない場合など労働基準法違反の問題については、厚生労働省でも、違反情報の通告を受け付けています。
メール連絡フォームを見ると、氏名・電話番号が必須項目とはなっていないこと、つまり、匿名での通告も可能なことが分かります。
一般的には、労働基準監督署に行って、自分の身分も明かして、具体的な資料も示して相談を行った方が問題解決に近づき易いとは言われるのですが、どうしても匿名対応が必要な場合は、匿名でメール通告することを考えてみても良いと思います。
2019年4月1日から有給取得義務化スタート!パートにも適用?罰則もある?わかりやすく解説!まとめ
2019年4月1日から年次有給休暇の新ルールが施行、有給取得義務化がスタートすることをお伝えしてきましたが、いかがでしたか?
- 2019年4月1日から「働き方改革関連法案」が施行されます!
- 「働き方改革関連法案」の一環として、有給休暇についても新しいルールが施行されます。
- これまでは労働者側が自分で有給休暇を申請する必要がありましたが、一定割合については使用者(会社側)から労働者に有給消化を指示することが義務化されます。
- 正社員だけでなく、パート社員でも有給休暇は発生することを正しく理解しましょう!
- 今回の法改正には罰則規定も盛り込まれています。自分が勤務する企業が対応してくれない場合は、労働基準監督署へ通告することをおすすめします。
「働き方改革」については、ここ数年の日本政府が行ってきた〇〇改革シリーズのなかでも、最も一般的に定着しているという印象を受けます。
法整備の完成度が比較的高いこと、罰則規定も盛り込まれた実効性の高いものになっていることが大きいと思うんですよね…。
2019年4月1日から、私たちの働き方は、法的にも大きく変わってきます。しっかり理解して、私たち一人一人がより良い働き方を目指して行きたいですね!