夏が近づくと食べたくなるのがウナギ!
でも毎年のように漁獲量が減っていることが報道されていますよね。
同時進行で、値上げの動きも…。
日本で人気のニホンウナギは国際機関から絶滅危惧種に指定されていますが、それでも資源管理がなかなか進まない状況があります。
ウナギの価格は2019年にどう推移するのか?令和時代も鰻を食べ続けることができるのか?レポートします。
東京都中央卸売市場(豊洲市場)のウナギ平均価格推移
東京都中央卸売市場(豊洲市場)が公開している市場統計情報から、うなぎ1kgあたり平均価格の推移を見てみましょう。
2019年1月は、昨年を大きく上回る価格でスタートし、今年もウナギ価格は高騰かと危惧されましたが、2月以降は昨年を僅かに下回る水準で推移しています。
最高値が付くのは例年7月。このままの傾向が続けば、昨年よりは若干お安い水準に落ち着く可能性が高いようにも見えますが、油断はできません…。
今回はその理由を解説するレポートです!
東京都中央卸売市場うなぎ1kgあたり平均価格推移(生データ)
ウナギのかば焼きの価格は15年間で2.3倍に上昇
ウナギのかば焼きの価格を消費者物価指数で追うと、18年までの15年間で2.3倍に上昇した。18年はうな重を1人前で500~1000円値上げする専門店が相次ぎ、不満の声が広がったが「食べることができただけ幸せだった」と振り返る日が来るかもしれない。
出典:日本経済新聞2019年5月13日付『エコノフォーカス』より
ウナギって何だか値上がりしてるよね…。
そう思っていましたけれど、15年間で2.3倍にも値上がりしていたんですね。
まずはウナギの供給量がどのように変化しているのか、データを見てみましょう。
ウナギの輸入量は大幅に減少している
水産庁が2016年(平成28年)7月に『ウナギをめぐる状況と対策について』という資料を公開していますが、それを見ると大体の状況はつかめます。
[グラフの水色部分]日本国内の生産量(ほぼ養殖)については、ピーク時から減少はしているものの、過去20年間で大きな変動は見られません。
一方、[グラフの赤色部分]輸入量については大幅に減少していることが分かります。
ざっくりとした区分としては、次のようになると思います。
- 日本国内の養殖ウナギを使った料理は、高価格帯
- 輸入ウナギを使った料理は、お手頃価格帯
現状は、ウナギの輸入量の減少によって、(2)お手頃価格帯で提供することが難しくなってきているということですね…。
中国のウナギ消費量が伸びてきている
ウナギの輸入量が減っているのは、とくに中国国内のウナギ消費量が増えてきているという背景があります。
現時点で確認できる最新のデータは、2013年(平成25年)のものなのですが、過去20年で大きく魚介類の消費量を伸ばしていることが分かります。
中国のウナギ消費量は着実に増えてきている。信頼できる統計が無く、日本を超えて世界最大になったとの試算や、日本の4割の「2万トン程度まで増えた」(水産庁関係者)との見方など幅はあるが、増加を疑う声はない。
出典:日本経済新聞2019年5月13日付『エコノフォーカス』より
日本に輸出するよりも、中国国内で消費する傾向が強まっているということ自体は、明らかな傾向のようですね。
ウナギは絶滅が危惧されながらも資源管理が難しい
日本人が好きなニホンウナギは、そもそも資源管理が難しいという側面もあります。
消費量の大部分が養殖ものになりますが、完全養殖が実現されていないため、稚魚を捕獲してそれを成魚まで養殖することになります。
ところがその稚魚も東アジア一帯を広く回遊しているという生態があり、資源管理を難しくしています。
ニホンウナギは国際自然保護連合(IUCN)から絶滅危惧種に指定
国際自然保護連合(International Union for Conservation of Nature and Natural Resources:IUCN)は、スイスに本部がある国際的な自然保護団体です。日本も1995年に国家会員として加入しています。
2014年6月12日、国際自然保護連合(IUCN)がニホンウナギを「絶滅する危険性が高い絶滅危惧種」に指定しレッドリストに掲載。これ以降、ニホンウナギの保護の動きが活発に。
『絶滅のおそれのある野生動植物の種の国際取引に関する条約』(いわゆるワシントン条約)のリストに掲載して、全世界で流通規制するかどうか?という議論に発展しました。
2019年5月23日にスリランカで開催されるワシントン条約締約国会議でニホンウナギの規制が導入される可能性は回避されたと報じられていますが、事態が改善されなければ、再び流通規制の議論が再燃する可能性があります。
ウナギは完全養殖がまだ実現化されていない
ニホンウナギは、卵の段階から成魚まで育てる完全養殖はまだ実現されていません。
日本国内の養殖ウナギも、中国や台湾の養殖ウナギも、沿岸に回遊してきたシラスウナギ(ウナギの稚魚)を捕獲して陸上の養殖池で養殖している点では同じです。
ニホンウナギは、太平洋のマリアナ海溝付近で生まれ、日本や台湾、中国、韓国の近海および河川に行く、再びマリアナ海溝の産卵場に戻ってくるのですが、稚魚のシラスウナギの段階で捕りつくされてしまうと、絶滅の危機に瀕してしまいます。
関係する国々が東アジア全域に及ぶため、ひとつでも規制を受けない国とか地域があって漁獲量を増やしてしまうと、資源管理が成り立ちません…。
現状では、日本・韓国・台湾の間では、養殖池に入れる稚魚の量を現状程度に留めようという合意ができているのですが、中国が合意していない(会議に参加しない)ために、包括的な管理が難しい状況にあります。
ウナギの価格は2019年にどう推移する?【令和時代も鰻を食べ続けることができるのか】まとめ
ウナギをめぐる諸問題をお伝えしてきましたが、いかがでしたか?
- 東京都中央卸売市場(豊洲市場)のウナギ1kgあたり平均価格は2月以降は昨年を下回る水準で推移しています。
- とは言っても、過去15年でウナギのかば焼き価格は2.3倍に高騰していて、お高い感じは否めません…。
- ウナギ価格の高騰は供給量が減っているためですが、とくに輸入ウナギが大きく減少しています。
- 主な輸入先であった中国国内でのウナギ消費が伸びてきていて、日本への輸出に回る分が減少してきている状況があります。
- ウナギは完全養殖が実現されておらず、稚魚の段階での乱獲問題がありますが、国際間で協調する枠組み作りも難航しています。
日本の食文化としても重要な鰻(うなぎ)。今後も鰻を食べ続けていくためには、資源管理もしっかり行う必要があります。
現在のウナギの資源管理に最も重要なのは中国の参画なのですが…。
ウナギの数が減っているのは、発端としては間違いなく日本に原因があります。そのことは率直に認めたうえで、中国の柔軟な対応を求めるかたちが望ましいのではないでしょうか。
政治的に問題があるタイミングだと解決も難しいと思うのですが、ここ最近は日中両国の関係改善の動きも顕著ですので、ウナギ問題についても前進を期待したいと思います!