TPP発効の影響で、小麦粉の価格が値下がりするというニュースがありましたね!
この春は何かと値上げの話題が多いなか、お財布にとっては嬉しいお知らせでしたが…。
実際に気になるのは、小麦粉を使ったパンなどの食品の価格がどのぐらい値下がりするか?ということですよね。
TPP発効によって、パンなどの食品の価格はどのぐらい値下がりするのか?解説します!
TPP発効で業務用小麦粉が7月10日から値下げに
2018年12月30日に、「環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定」、CCTPP(TPP11)とも呼ばれる、いわゆるTPP協定が発効しています。
TPPについては、途中でアメリカが交渉から脱退するなど紆余曲折がありましたよね…。
全体像が分かり難いところがあるので、まずはTPPについて簡単に説明しておきましょう!
TPPはアメリカの離脱でCPTPP(TPP11)として発効
2015年10月5日 | TPP交渉が大筋合意 |
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2016年2月4日 | TPP協定が12カ国により署名 |
2017年1月20日 | トランプ大統領がTPP離脱を表明 |
2018年1月24日 | アメリカを除く各国がCPTPP(TPP11)合意 |
2018年3月8日 | アメリカを除く各国がCPTPP(TPP11)署名 |
2018年12月30日 | CPTPP(TPP11)発効 |
TPPはもともと12か国で協議を重ね、やっとのことで大筋合意。参加各国で署名まで終えた後に、最終局面でトランプ大統領がTPP離脱を表明!
言うまでもなく、そのほかの参加各国は大変なことに…。
というのも、TPPの発効には「批准・受諾等した署名国が全署名国のGDPの85%以上でかつ、6カ国以上であること」という要件があるのですが、最大の経済大国であるアメリカが離脱してしまったため、この要件を満たせなくなってしまったのです。
残された11か国は、元のTPP案を大筋で踏襲しつつ、アメリカ抜きのCPTTP締結に向けて再協議を重ねることに。CPTPPは、11か国での協定となったため、TPP11とも呼ばれます。
多くの問題を乗り越え、CPTPP(TPP11)への合意・署名を経て、2018年12月30日に発効しました。
まずは、日本、メキシコ、日本、シンガポール、ニュージーランド、カナダ、オーストラリア、6か国の間で発効して、他の参加国は国内での批准作業が終わり次第、順次CPTPP(TPP11)に合流してくることになります。
協定の正式名称の推移は、次のようになります。(これ以降の記事文中では、TPPとCPTPP・TPP11を、特に区別することなくTPPと総称します)
- 環太平洋パートナーシップ協定(TPP:Trans-Pacific Partnership Agreement)※アメリカの離脱で凍結中
- 環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定(CPTPP:Comprehensive and Progressive Trans-Pacific Partnership)※参加国数から「TPP11」とも呼ばれる
CPTPP(TPP11)発効による農林水産物への影響
TPP協定は、環太平洋地域の国々による経済の自由化を目的としたものです。ひとことで言うと、輸出も輸入もし易くなるということですね。
日本は比較的に工業製品に優位を持っていますので、TPP協定が日本に与える影響は、大きく言うと次の2つの側面に分かれます。
- 工業製品を輸出しやすくなる
- 農林水産物を輸入しやすくなる
CPTPP(TPP11)発効によって、農林水産物は、82.9%にあたる品目で関税が撤廃されることになります。
主要な農林水産物へどのような影響があるのか、見てみましょう。
コメ
コメは、日本が「重要」と位置付けている項目に入るので、関税は維持されます。ただし、オーストラリアに対して年間8400トンの輸入枠を新たに設定します。
牛肉
牛肉は、発効前の時点で38.5%の関税を段階的に引き下げて、協定発効から16年目に9%まで下げることになります。
豚肉
豚肉は、発効前の時点で価格の安い肉にかけている1キロあたり最大482円の関税を段階的に引き下げて、10年目に50円まで下げることになります。
小麦と大麦
小麦と大麦は、国が一括して輸入する国家貿易は維持されます。ただし、国内農家の支援にあてるなどの目的で輸入価格に上乗せしている「マークアップ」と呼ばれる事実上の関税を段階的に引き下げ、9年目までに45%削減することになります。
乳製品
乳製品については、バターと脱脂粉乳について、TPP参加国を対象に新しく輸入枠を設定します。チーズは、粉チーズやチェダー、ゴーダチーズなどの関税を16年目に撤廃します。
TPP発効で業務用小麦粉が7月10日から値下げに
7月10日から業務用小麦粉の価格が値下げされますが、これもTPP発効の影響です。
この春は値上げされる商品ばかりでしたから、消費者としては嬉しいニュースですね!
でも、小麦粉を使ったパンなどの製品価格はどのぐらい値下がりするんでしょうか?
まずは今回の値下げの内容を確認、パンなどの製品価格への影響を見てみましょう。
小麦は約9割が輸入でCPTPP域内国からの輸入が約半数
はじめに小麦の輸入比率、裏返して言うと国内自給率を見てみましょう。
農林水産省の資料によると、平成31年度の総需要が579万トンで、国内産が合計78万トンですから、国内自給率は約13.47%です。
つまりほぼ9割を輸入に頼っているということですね。
一方、輸入先を見ると、最大の輸入先であるアメリカはTPPから離脱してしまいましたが、第2位のカナダと第3位のオーストラリアを合わせると49.9%、ほぼ半数を占めています。
TPP協定の発効が小麦に与える影響はかなり大きいことが分かります。
現状ではパンなどの製品価格への影響はほとんど無し
- 製粉会社大手の、日清製粉・日本製粉・昭和産業、3社で同時に実施
- パンなどに使われる強力粉で25kgあたり20円値下げ
- うどんや菓子に使われる中力粉や薄力粉で25kgあたり10円から15円値下げ
こちらが今回の値下げの内容です。
小麦と大麦は、国が一括して輸入する国家貿易というかたちをとっていることはすでに説明しましたが、4月に国から各製粉会社への引き渡し価格は引き下げられていて、今回の値下げはそれを反映したものです。
消費者にとって気になるのは、最終的な製品価格がどのぐらい値下がりするかですよね。
ただし、今回の小麦粉の値下げ程度では、最終的に小麦粉を用いて加工製造した食品の販売価格にはほとんど影響は無いようです…。
今回の価格改定が食パンの小売価格に与える影響について、農水省は1斤(173円)あたり0.2円程度にとどまると試算する。
(日本経済新聞2019年3月8日付『輸入小麦、4月から1.7%値下げ TPP発効で実質関税圧縮』より)
TPP発効で小麦価格が値下がり!パンの価格はどのぐらい下がるの?まとめ
TPP発効で小麦価格が値下がりしますが、パンの価格は実際どのぐらい下がるのか、お伝えして来ましたが、いかがでしたか?
- TPP協定は、環太平洋地域の国々による経済の自由化を目的としたもので、当初12か国により協議されていました。
- ところが最終局面でアメリカが離脱、残りの11か国でCPTPP(TPP11)を締結することになりました。
- 2018年12月30日、CPTPP(TPP11)が発効。
- TPP協定(CPTPP)により、輸出も輸入もし易くなります。農林水産物は、82.9%にあたる品目で関税が撤廃されます。
- TPP発効により、7月10日より小麦粉の値下げが行われることになりましたが、食パン価格にはまだほとんど影響はありません。
小麦粉が値下がりするというニュースを聞いて、おぉっ!と思った人も多かったかもしれませんね。
でも、今回ぐらいの水準では、小麦粉を使った製品の価格にはほとんど影響は無いようです。食パン価格にも目立った値下げは無い様子で、ちょっと残念ですね…。
長期的にはTPP発効の影響は拡大して行き、基本的に、関税などの輸入障壁が設けられている物品については、値下がりする方向に動いていくことになります。
とは言え、消費増税に代表されるように、社会保障費もどんどん増えていくわけですから…。やはり賢く生活する日頃の節約術はより重要になってくると思います♪