携帯料金値下げを目指した、電気通信事業法の改正は今国会後半の注目ポイントです。
そもそも、携帯料金・スマホ料金の値下げ論争は、政府が昨年「4割引き下げ可能」という見解を示したことから本格化したものですが…。
電気通信事業法改正の主な目的は、端末代金と通信料金を切り離すことです。
「携帯値下げ法案」とも呼ばれる、電気通信事業法の改正案について解説します!
日本政府は携帯料金・スマホ料金が4割引き下げ可能との見解
2019年2月25日(月)、「携帯値下げ法案」とも呼ばれる電気通信事業法の改正案が、与党自民党の部会で了承、3月上旬にも今国会に提出される可能性が高まりました。
『高い!』と言われる日本の携帯料金・スマホ料金は、本格的に値下げの動きを見せるのでしょうか?
端末代金と通信料を切り離してセット料金は禁止することが柱
一連の携帯料金・スマホ料金の値下げの動きの中心は、通信事業者に端末代金と通信料金を完全に切り離した「分離プラン」の提供を義務付けることです。
現状では、端末代金の割引に充てるために、結果的に月々の通信料が割高に設定されてしまう状況があるのですが、今後、セット料金は禁止する方向で考えられています。
販売代理店を届出制とし総務省から行政指導を可能に
同時に、販売代理店への規制強化も実施される方向となっています。
現状では、携帯回線・スマホ回線の販売を行う販売代理店は、通信事業者経由で把握している状態となり、総務省が直接行政指導しているわけではありません。
今後は、販売代理店の届出制度を導入。登録制となることで、総務省から直接行政指導することを可能とする方向です。
電気通信事業法改正案の施行規則も一部改正
電気通信事業法の施行規則も改正の動きがあります。
- 現行:廃止が予定されている電気通信役務は規制の対象外
- 改正後:廃止が予定されている電気通信役務であっても規制対象に含める
指定電気通信役務を提供する電気通信事業者は、料金などの提供条件について契約約款を定め、実施前に総務大臣に届け出なければならないと規定されています。
今回の改正によって、「廃止が予定されている電気通信役務」ということで規制の対象外とすることが出来なくなったということですね。
非常に簡単にいうと、通信事業者にとっては規制を回避するための抜け道が無くなる、と言って良いかと思います。
総務省(平成31年1月25日付け報道資料)『電気通信事業法施行規則の一部改正について』
通信大手3大キャリアの対応状況
携帯料金・スマホ料金の値下げについて、政府は着々と準備を進めています。
ここで、通信大手3大キャリアのこれまでの対応状況を一通り確認しておきましょう。
ドコモの通信料金は2019年春に2割〜4割値下げの計画
総務省は、3か月に一度、『電気通信サービスの契約数及びシェアに関する四半期データ』を公開しています。
2018年(平成30年)12月21日発表の最新データによると、NTTドコモのシェアは約4割です。
そしてNTTドコモを子会社に持つNTTグループは、今でも日本政府が筆頭株主という状況。
auとかソフトバンクとは状況が異なるわけで、NTTドコモの経営方針にも、相当程度、日本政府の意向が反映されると考えるのが自然です。
NTTドコモは、2018年10月31日の決算説明会で、2019年春に『大胆な料金プランの見直し』を実施し、携帯料金を2割〜4割下げることを公表しました。
auはNTTドコモの料金値下げに追従する意向
auは、NTTドコモの料金値下げに追従・対抗値下げする意向を示しています。
競争しているわけですから、ある意味当然の反応ですよね…。
ソフトバンクは静観の構え(値下げはワイモバイルで対応か)
ソフトバンクは若干温度差があり、NTTドコモの料金値下げに、ソフトバンクブランドとしての対抗値下げには静観の構えです。
ソフトバンクは、格安スマホブランドとしてワイモバイルを持っていますので、現時点では、値下げ対応はワイモバイル中心に対応する方針を示しています。
「携帯値下げ法案」の影響については賛否両論がある
法的な整備が進むことで、料金プランの設定や回線販売の代理店にまで行政指導が行き渡るようになります。
着地点が見えてきたことで、「携帯値下げ法案」の影響については賛否両論が見られる状況になっています。
「携帯値下げ法案」の最も基本的な目的は、端末代金と通信料金を切り離すことですが、端末代金と通信料金の両方が同時に安くなるわけでは無い、そういう指摘があるんです。
通信料金が安くなるのは間違いない
トップシェアのNTTドコモが料金値下げを明らかにしている以上、通信料金が安くなるのは間違いありません。
NTTドコモは、2019年春に料金プランを見直し、通信料金を2~4割値下げすることを既に公表しています。
最大値として示された「4割値下げ」は、日本政府の「4割引き下げ」という意向を反映したものと考えるのが自然でしょう。
端末代金は高くなる可能性もある
通信料金が安くなる一方、端末料金については高くなる可能性もあります。
端末代金の割引に充てるために、結果的に月々の通信料が割高に設定している、これが総務省の有識者会議の指摘だったことを思い出してください。
割り引く原資が無くなる(分離される)以上、普通に考えれば、端末代金は高くなるはずです。
スマホユーザーが二極化・5G普及が遅れる危険性も
「携帯値下げ法案」の影響により、長期的にスマホユーザーが二極化していく可能性が指摘されています。
- iPhoneの最新端末などを積極的に購入する層
- 格安端末を購入する層
こうした2つの層に分かれていく可能性が高いのではないかということですが…。
ハイエンド端末を使用するユーザー数が減ることで、5Gと呼ばれる次世代通信規格の普及が日本では遅れてしまう危険性についても危惧されています。
大手キャリアの通信料金が安くなることで、MVNO(格安スマホ)の事業者が生き残ることができるのか?という問題もでてきそうです。
テクノロジーをテーマとしているメディアの論調は、総じて、メリットとデメリットの双方を冷静に見つめようという主張が多いと感じられます。
『携帯値下げ法案』が今国会提出へ【電気通信事業法の改正案を解説】まとめ
「携帯値下げ法案」とも呼ばれる、電気通信事業法の改正案について解説してきましたが、いかがでしたか?
- 日本政府は昨年「4割引き下げ可能」という見解を示し、携帯料金・スマホ料金の値下げの動きが加速しています。
- 「携帯値下げ法案」とも呼ばれる、電気通信事業法の改正案が3月上旬にも今国会に提出される見込みとなりました。
- 電気通信事業法の改正案は、通信事業者に「端末代金」と「通信料金」を切り離した分離プランの提供を義務付けることが中心です。
- 最大手のNTTドコモは、2019年春に「通信料金」の2~4割減の方針を示していて、「通信料金」が安くなるのは確実な状況です。
- 一方で「端末代金」は高くなる可能性も指摘されていて、5Gなど先端通信環境の普及を遅らせると危惧する声も聞かれます。
『お金節約.com』のテーマからは、通信料金が安くなるのは嬉しいところですが、端末代金が高くなるデメリットも合わせ持つことは悩ましい状況です…。
5Gなど先端通信環境の普及にも影響を与えるとなると、国全体の将来を考えるうえでは、かなり慎重に議論する必要がある事案であることも分かります。
携帯料金・スマホ料金の値下げについては、現在の日本で、政治主導の案件がどのように進行するのかを見ることができる典型的なケースにもなっていますね。
今国会の議論の行方は、注目して見守りたいと思います!