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日本の携帯料金・スマホ料金は高い!?【総務省が実施した内外価格差調査を解説】

携帯料金
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編集長より子
編集長より子
『お金節約.com』編集長「より子」です。

政府は「携帯値下げ法案」とも呼ばれる、電気通信事業法の改正案を今国会で成立させようとしています。

値下げする必要があるということは、現状が高いという認識があるということですよね。

その認識のもとになった基礎的な調査資料の一つが、総務省の『電気通信サービスに係る内外価格差調査』です。

今回は、この『電気通信サービスに係る内外価格差調査』資料について解説します!

総務省の調査条件と基本用語、問題点を解説

まずは総務省の『電気通信サービスに係る内外価格差調査』の内容を一通り確認してみましょう。

総務省の『電気通信サービスに係る内外価格差調査』は、2018年(平成30年)9月19日に公開されました。国の機関が行う調査結果としては、現時点で最新のものです。

『電気通信サービスに係る内外価格差調査』の調査条件

比較各国 (日)東京、(米)ニューヨーク、(英)ロンドン、(仏)パリ、(独)デュッセルセルドルフ、(韓)ソウル
比較データ容量 2GB、5GB、20GB
シェア1位のMNO事業者 日本側データは「NTTドコモ」で比較
最も安いMNO事業者 日本側データは、2GB、5GBを「Y!Mobile」、20GBを「au」で比較
MVNO事業者 日本側データは「楽天モバイル」で比較
調査時期 2018年(平成30年)3月
公開時期 2018年(平成30年)9月

最初に言葉の定義を説明しておきますね。

MNO(Mobile Network Operator)とは

移動体通信事業者と訳されます。日本ではMNOという呼び方をすることが少ないので馴染みが無い言葉だと思いますが、総務省の定義では、自前で通信設備を持っている事業者のことを指します。要するに私たちが思い浮かべる、携帯大手3社のことと考えればOKです。

MVNO(Mobile Virtual Network Operator)とは

仮想移動体通信事業者と訳されますが、日本でも「MVNO」と呼ばれることが多くなっています。総務省の定義では、自前の通信設備を持たずに、MNOの通信設備を利用して(借りて)いる事業者のことを指します。

調査条件の問題点は安い回線をY!mobileで比較していること

調査条件・比較条件として問題点を上げると、最も安い事業者の価格を比較したケースでは、日本側の比較対象をソフトバンクのサブブランド「Y!mobile」としていることです。

調査時期、2018年(平成30年)3月頃の市場シェア資料を示しました。

Y!mobileの利用者数は、ソフトバンクグループの約14.6%を占めるに過ぎない状況ですから、実態に即していると言って良いかどうか非常に微妙です。

Y!mobileは、イーモバイルとウィルコムがソフトバンクに吸収合併された経緯から、自前の通信設備を使っているので、MVNOでは無くMNOに分類するのは「定義上は」間違いでは無いのですが…。

菅官房長官の「携帯料金4割下げる余地あり」発言

日本政府が、政府主導で携帯料金・スマホ料金を値下げする意向であることは、菅官房長官の2018年8月21日の発言によって表面化しました。

菅官房長官は発言の中で、日本の通信料は「経済協力開発機構(OECD)加盟国平均と比較して」2倍程度と報告を受けていることを根拠としています。

この発言のタイミングでは、政府は総務省の調査結果を把握していたと考えるのが自然かと思いますが、その総務省の調査には、玉虫色的な表現も見えるわけですね。

Y!mobileの料金で比較した、「最も安い通信事業者(MNO)の国際比較」では、日本のキャリアもけっこう頑張ってる(安い)とも読めてしまうわけですから。

政官財で何らかの攻防があったことも想像されますね…。

総務省の『電気通信サービスに係る内外価格差調査』の内容を解説

背景で動いているものを想像すると、アレコレ色々考えてしまいますが…。

まずは、総務省の『電気通信サービスに係る内外価格差調査』について、重要な部分を一通り見てみましょう。

シェア1位の事業者比較では日本の通信料金は明らかに高い

シェア1位の事業者(日本側はNTTドコモ)で比較すると、データ容量2GBでは僅かにニューヨーク(Verizon)よりも安くなるものの、データ容量5GB・20GBでは最も高くなることが分かります。

インプレス社の「ケータイWatch」の解説記事では、他の都市の平均値を比較した表が示されています。

これを見ると、「日本の通信料は経済協力開発機構(OECD)加盟国平均と比較して2倍程度高い」という菅官房長官のコメントは、ほぼ実態に即していることが分かります。

1番安い事業者比較では日本の通信料金も頑張っているようにも見えますが…

1番安いMNO事業者の料金を比較したケースでは、先にも説明しましたが、日本側は「Y!mobile」の料金で比較されているため、特に一般的に需要が多い、データ容量2GB・5GBでは、それなりに頑張って安くなっているようにも見える結果となっています。

ここは誤解を招きやすい、ミスリードしやすい部分になってしまっているかと思います。

MVNO(格安スマホ)事業者の比較では標準レベル

自前で通信設備を持たないMVNO事業者は、日本では格安スマホと呼ばれていますね。

格安スマホは、日本側は「楽天モバイル」で比較されていますが、国際的にも標準的な料金レベルにあることが分かります。

逆に言えば、格安スマホの料金が、現在の水準から極端に大きく値下がりする可能性は少ないとも言えると思います。

フィーチャーフォン(ガラケー)の料金は十分安い水準

音声通話のみの、フィーチャーフォン、いわゆるガラケーの料金については、日本の料金は国際的にも十分安い水準にあることが分かります。

FTTH(光回線)の料金も十分安い水準

FTTH、つまり固定回線インターネット通信、光回線の料金についても、日本の料金は国際的にも十分安い水準にあることが分かります。

アナログ固定電話の料金も十分安い水準

アナログ固定電話の回線料金についても、日本の料金は国際的にも十分安い水準にあることが分かります。

「端末代金込み」でも日本の3大キャリアのスマホ通信料金は高い

日本の携帯料金・スマホ料金については、端末値引き原資も通信料金に含まれているために、高いように見えてしまうのでは?

そういう意見もありますよね。

総務省の『電気通信サービスに係る内外価格差調査』は、サマリーではない調査資料本編には、通信料金と端末割賦代金が一体となった料金プランでの比較も行われています。

端末代金は各国で大きく違うことはない

データ容量5GBでの、端末料金込みのプランでの比較グラフがこちらです。

ぱっと見ても、端末代金を示すミドリ部分は、各国ともだいたい同じ幅なのが分かりますよね。ハードウェア代金が各国でものすごく違うということは無いのは当然ですけれど…。

念のため、日本の値と、他の国々の平均をとってみると次のようになります。

  • 日本の端末代金:3,699円
  • 各国の端末代金平均:3,983円

日本の端末代金部分は、他の国々の平均と比較すると、約300円ほど安いです。

ただし、この調査結果は、調査時点で3大キャリアが端末値引きを手厚く付けていた「iPhone 8」が対象です。このグラフから、調査時点で2,754円の値引き(グラフの赤点線部分)が入っていることが分かります。

iPhone 8 のような調査当時のハイエンド端末ではなく、値引き額が少ない端末を買った場合は、端末代金部分が逆転して(高くなって)しまうことも十分考えられます。

そして何より、利用者にとって重要な、端末代金込みの料金で比較した場合には、

  • 日本の端末代金込みデータ容量5GBスマホ料金:8,507円
  • 各国の端末代金込みデータ容量5GBスマホ料金平均:7,532円

このように日本の端末代金込みスマホ料金の方が、他の各国の平均よりも約1,000円高くなってしまうのです。

日本は「3大キャリアのスマホ通信料金だけ」が高い

以上を要約すると、

日本の3大キャリアのスマホ通信料金は高い。

ことが分かります。

MVNO(格安スマホ)、FTTH(家庭の光インターネット回線)、アナログ電話回線、これらは国際的にも標準レベル以下の安い価格にあるのですが…

日本の3大キャリアのスマホ通信料金だけは高い。

そういう状況が見えてきます。

日本の携帯料金・スマホ料金は高い!?【総務省が実施した内外価格差調査を解説】まとめ

総務省が実施した内外価格差調査の内容を解説してきましたが、いかがでしたか?

今回紹介したこと
  • 政府は「携帯値下げ法案」とも呼ばれる、電気通信事業法の改正案を今国会で成立させようとしています。
  • 値下げする必要があるということは、現状が高いという認識があるということですが…。
  • その認識のもとになった基礎的な調査資料の一つが、総務省の『電気通信サービスに係る内外価格差調査』です。
  • 読み手をミスリードしやすい部分もあるので、読解する際には注意も必要です。
  • 結論としては、日本の3大キャリアのスマホ通信料金だけが国際的見ても高い水準にあることが分かります。

日本政府が、「携帯値下げ法案」とも呼ばれる、電気通信事業法の改正案を推進する背景には、日本のスマホ通信料は経済協力開発機構(OECD)加盟国平均と比較して2倍程度高い、という認識があります。

総務省の『電気通信サービスに係る内外価格差調査』も、部分的に玉虫色の表現があるとは言え、全体の流れとしては、政府の主張を裏付けるものになっています。

「携帯値下げ法案」を巡る与野党の攻防は、これから本格化してくると思われますが、国会での議論に注目して行きたいと思います!

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