当サイトでも度々お伝えしてきた『ふるさと納税』。
来年度からいよいよ抜本的な見直しとなりそうな状況ですが…。その前に!
大阪府の泉佐野市が、年度内の駆け込み需要を狙ったかのようなキャンペーンを展開しています。
キャンペーンの内容が『アマゾンギフト券100億円分』ということで、総務省と泉佐野市とのバトルが激化しているんです。
ふるさと納税を巡る、総務省と泉佐野市との激しい綱引きについてご報告します。
総務省が「ふるさと納税」運用見直しの方向性を示す
ふるさと納税は、名前こそ『納税』となっていますが、実態は『寄付』なんです。
人口減少に悩む地方自治体にとって、ふるさと納税で得られる寄付金は貴重な財源です。
ふるさと納税の利用者を獲得するための返礼品競争も激化の一途を辿り、社会問題化している状況は、『お金節約.com』でもこれまで何度かお伝えして来ました。
ふるさと納税の基礎知識

ふるさと納税を地方自治体に行うと、返礼品がもらえるだけでなく、寄付を証明する「受領書(寄附金受領証明書)」が発行されます。
確定申告の際に、この「受領書(寄附金受領証明書)」を添付することで、所得税の還付や個人住民税の控除が受けられます。
ふるさと納税した人にとっては、返礼品がもらえる上に、節税もできるという二重のメリットがあることで人気を集めているんですね。
ふるさと納税のためだけに確定申告するのは面倒という人のためには『ワンストップ特例』制度も用意され、ECサイトでお買い物をするような感覚でふるさと納税を利用する人も増えてきています。
ふるさと納税の基礎知識については、詳しくは次の記事を参考にしてみてください!

過熱する返礼品競争が社会問題化
除外検討① | 寄付金に対する自治体の返礼品の額の割合が3割を超える場合 |
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除外検討② | 返礼品が地場産品でない場合 |
ふるさと納税の利用者を獲得するための返礼品競争は激化の一途を辿り、家電製品やギフト券など、「これって本当にふるさと納税?」と疑問を持たれるような状況も…。
ふるさと納税を管轄する総務省も、近年は毎年のように『通知』を出して、自治体に運用を見直しを求めてきました。
それでも中々改善されずにいたところ、2018年9月11日、閣議後の記者会見で、野田聖子総務大臣(当時)が一歩踏み込んだ見解を示したことで、事態は大きく動き始めます。
- 寄付金に対する自治体の返礼品の額の割合が3割を超える場合
- 返礼品が地場産品でない場合
この2つが認められた場合、税優遇の対象から外すことを検討するというものです。
総務省がより踏み込んだ姿勢を示したことで、返礼品を見直す地方自治体が増えてきている一方、見直しが遅れている自治体に、利用者の需要が集中するという状況も発生しました。
ふるさと納税見直しのための、2018年11月1日調査の状況については、詳しくは次の記事を参考にしてみてください!

違反している自治体はどこ?総務省の最新調査データを検証
総務省がまとめた、ふるさと納税の返礼品送付状況の最新データは、昨年、2018年12月27日付のものです。
こちらのデータをもとに、ガイドラインの遵守状況を見てみましょう。
返礼品割合3割超かつ地場産品でない36の自治体
北海道 | 森町、八雲町、愛別町、羅臼町 |
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宮城県 | 多賀城市 |
群馬県 | 富岡市 |
新潟県 | 三条市、阿賀町 |
長野県 | 小谷村 |
岐阜県 | 養老町 |
静岡県 | 下田市、南伊豆町 |
愛知県 | 幸田町 |
滋賀県 | 湖南市 |
京都府 | 亀岡市 |
大阪府 | 泉佐野市、河内長野市 |
兵庫県 | 市川町、上郡町 |
和歌山県 | 御坊市、高野町 |
広島県 | 安芸太田町 |
山口県 | 柳井市 |
徳島県 | 佐那河内村 |
香川県 | 多度津町 |
福岡県 | 大刀洗町、川崎町、福智町、上毛町 |
佐賀県 | みやき町 |
長崎県 | 松浦市 |
熊本県 | 玉東町 |
大分県 | 竹田市 |
宮崎県 | 川南町 |
鹿児島県 | 枕崎市 |
沖縄県 | 多良間村 |
(総務省2018年12月27日付調査結果より、『お金節約.com』編集部作成)
総務省が示している、ふるさと納税のガイドライン2点を満たしていない自治体は、資料から次の通りです。
- 返礼品金額の割合が3割を超える自治体(52)
- 返礼品が地場産品でない自治体(100)
返礼品金額の割合が3割を超える自治体が52、返礼品が地場産品でない自治体が100、両方とも違反している自治体を確認したところ、上記の表の通り、36の自治体が該当する結果となりました。
総務省の調査対象は、1788団体とされていますから、2つのガイドラインを両方とも違反している自治体の比率は全体の約2%ほどになりますね。
ガイドラインに違反している自治体は確実に減少傾向

総務省が示している、ふるさと納税のガイドライン、こちらに違反している自治体の数は、時系列的に見ると大幅に減少しています。
総務省の2018年9月1日の資料でも、減ってきていることは明らかですが、最新版の調査結果でもさらに減少していることが分かります。
ふるさと納税を利用する側にしてみれば、それだけお得具合が減ってきているということでもあり、微妙なところなのですが…。
ガイドラインを遵守する自治体が増えたことで、相対的に、いまなお積極的な姿勢を示している自治体が目立ってしまっている状況とも言えます。
大阪府泉佐野市と千葉県成田市の状況を比較

大阪府の泉佐野市は、2019年3月末まで限定で『アマゾンギフト券100億円還元閉店キャンペーン』を実施中。
先にまとめた36自治体にも入っていますが、もともと大阪府の泉佐野市は、ふるさと納税積極派の代表的な自治体です。
それにしても、100億円です!
ナントカpayみたいな、ふるさと納税の実施自治体にしてはありえない飛ばしっぷりに、特設サイトにアクセス障害が発生するほどの人気を集めています…。
泉佐野市の基本情報
自治体名 | 泉佐野市 |
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市制施行 | 1948年(昭和23年)4月1日 |
人口 | 約101,000人 |
世帯数 | 約46,000世帯 |
ホームページ | 泉佐野市「賑わいと歴史ある迎都 いずみさの」 |
泉佐野市は、大阪市と和歌山市のほぼ中間に位置しています。簡単に言うと、関西国際空港の対岸に広がっている感じですね。立地上、訪日外国人旅行者の宿泊需要が多い場所とされています。
国際空港の隣接市となると、『お金節約.com』編集部も成田市にありますので親近感を感じるところです!
泉佐野市の財政状況を成田市と比較
項目 | 泉佐野市 | 成田市 |
歳入 | 580億円 | 644億円 |
歳出 | 579億円 | 609億円 |
実質公債費比率(単年度) | 18.9% | 6.0% |
将来負担比率 | 176.2% | 74.6% |
(平成28年度会計で比較)
泉佐野市の財政状況を、同じく国際空港がある成田市と比較して見ました。
泉佐野市の決算データが、平成28年度分までしか確認できませんでしたので、同じ平成28年度での比較表としています。
単純に言うと、泉佐野市の財政状況がけっこう苦しいことが分かります。
成田市は日本全国でもトップクラスの財政健全度ですので、比較対象として酷だという側面はあると思いますが、それにしてもかなり開きがあります。
泉佐野市の場合は、平成17年度までは歳出超過の状態にあり、平成20年度には連結実質赤字比率が約24%と早期健全化基準(17.44%)を超過したことで、財政健全化団体となっています。財政的にピンチに陥ったということですね…。
泉佐野市の職員数を成田市と比較
項目 | 泉佐野市 | 成田市 |
職員数 | 465人 | 1,251人 |
人口 | 100,813人 | 133,456人 |
職員一人の対応人口 | 216.8人 | 106.6人 |
(泉佐野市は平成29年度予算より、成田市は平成30年度資料より抜粋)
泉佐野市は、平成25年度決算で財政健全化計画を達成し、平成27年度決算で早期健全化団体から脱却していますが、職員数をピーク時から半減させるなど、ほぼ人件費削減によって何とか達成したことが見て取れます。
比較年度は若干違いますが、泉佐野市の人口当たり職員数は、成田市のほぼ半分です。
一人の人間の能力が2倍化するということはあり得ませんから、単純に言うと、泉佐野市の行政サービスの質・量は、成田市よりもかなり落ちるということですよね。
何とか財政を安定させたいという危機感は強く、ふるさと納税の若干強引とも言える集客方法につながっているのではないでしょうか…。
泉佐野市の『アマゾンギフト券100億円還元閉店キャンペーン』
キャンペーン名 | アマゾンギフト券100億円還元閉店キャンペーン |
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実施期間 | 2018年2月1日~3月31日 |
決済方法 | クレジットカードのみ |
キャンペーン内容 | A)返礼品順次発送の場合、寄付額10%相当のAamzonギフト券贈呈 B)返礼品5月以降発送の場合、寄付額20%相当のAmazonギフト券贈呈 |
適用条件 | キャンペーン特設サイトからの申込に限る |
キャンペーン特設サイト | 泉佐野市ふるさと納税特設サイト「さのちょく」 |
泉佐野市のキャンペーン内容は、非常にお得です!
そもそも返礼品が豪華なことで知られている泉佐野市ですが、返礼品に加えて、
- 返礼品順次発送の場合、寄付額10%相当のアマゾンギフト券贈呈
- 返礼品5月以降発送の場合、寄付額20%相当のアマゾンギフト券贈呈
アマゾンギフト券が100億円相当に達するまで、このキャンペーンを継続するという破格の条件です!(ココもナントカpayに似ていますね…。汗)
注意点としては、キャンペーンが適用されるのは、泉佐野市が用意した特設ページ「さのちょく」からの申込限定ということです。
各種ふるさと納税ポータルサイトからの申込では、キャンペーンの対象になりません。
泉佐野市と総務省のバトルが激化
ふるさと納税の規制強化を進めてきた総務省は、泉佐野市の動きに良い顔をするはずもなく…。泉佐野市と総務省のバトルは、果てしない泥仕合の様相を呈してきています。
総務省からの批判
ふるさと納税をめぐり、大阪・泉佐野市が返礼品に加え、アマゾンのギフト券を総額で100億円分提供する取り組みを始めたことについて、石田総務大臣は「身勝手で、社会的にも教育的にも悪影響が大きい」などと強く批判しました。
ふるさと納税をめぐって総務省は、返礼品を、寄付額の3割以下の地場産品にするよう求めていますが、大阪・泉佐野市は、返礼品に加え、アマゾンのギフト券を提供するキャンペーンを始めました。
これについて、石田総務大臣は閣議のあとの記者会見で、「ギフト券は『地場産品』でもなければ、返礼割合が3割以下でもなく、地域活性化にもつながらない」と指摘しました。
そのうえで、「度重なる要請を無視し、明らかに趣旨に反する返礼品で寄付を集めようとすることは、自分だけがよければ他の自治体への影響は関係ないという身勝手な考えであり、社会的にも教育的にも悪影響が大きい。制度の存続を危ぶませるものだ」と強く批判しました。
泉佐野市の反論
ふるさと納税をめぐり大阪・泉佐野市が始めた、アマゾンのギフト券を100億円分提供する取り組みについて石田総務大臣が「身勝手で悪影響が大きい」などと強く批判したのに対し、泉佐野市は「総務省の見解だけで強硬に物事を推し進め、地方分権という理念の趣旨に反する」というコメントを出しました。
コメントの中で泉佐野市は、「ふるさと納税は首都圏と地方の格差を埋めるべく創設された制度と考えている。総務省の見解だけで強硬に物事を推し進め、無理やり地方を押さえつけようとしているように思われ、地方分権という理念の『趣旨』に反するのではないか」などとしています。
そのうえで、「総務省が規制を強化して各自治体のアイデア・取り組みを制限していくことは、都市自治体と地方自治体との格差解消につながらないのではないか」としています。
泉佐野市によりますと、市が設けているふるさと納税のサイトはキャンペーンが始まった今月初め以降、アクセスが集中してつながりにくい状況になることがあるということで、泉佐野市は今後もキャンペーンを続けるとしています。一方、政府が返礼品を寄付額の3割以下の地場産品とし、ルールを守らない自治体は、制度の対象から外すことなどを盛り込んだ法律の改正案の年度内の成立を目指していることについては、「法制化された場合は、あくまでも法を順守する」としていて、これまでの返礼品のあり方などを見直し、ふるさと納税を続けていく考えを示しています。
泉佐野市をふるさと納税の対象から外すというコメントも
ふるさと納税の返礼品に加えてギフト券を贈るキャンペーンを行っている大阪府泉佐野市について、石田総務大臣はふるさと納税制度の対象自治体から外す考えを示唆しました。
石田総務大臣:「(泉佐野市の行為は)大臣通知に従って改善して頂いた団体とか、あるいは都会の自治体。そういう皆さん方の気持ちを考えれば、一日も早く是正して頂きたい」
石田大臣はこのように述べ、今年6月以降に泉佐野市をふるさと納税の対象自治体から外す方向で検討に入る考えを示しました。泉佐野市は、ネット通販大手「アマゾン」のギフト券を3月末までの申し込み分まで「100億円キャンペーン」として配布しています。このため、総務省では3月末までに「寄付額の3割以下、地場産品に限る」などの基準に反しているかどうかを判断する方針です。
ふるさと納税で『アマゾンギフト券100億円分!!』を贈る大阪府泉佐野市と総務省のバトルが激化!まとめ
ふるさと納税を巡る、泉佐野市と総務省のバトルについてお伝えして来ましたが、いかがでしたか?
- ふるさと納税の実態は寄付で、確定申告の際に証明書を添付することで、所得税の還付や個人住民税の控除が受けられます。
- ふるさと納税をすると、返礼品がもらえる上に、節税もできるという二重のメリットがあることで人気を集めています!
- 地方自治体にとって、ふるさと納税で得られる寄付金は貴重な財源で、ふるさと納税獲得のための返礼品競争が激化。
- 総務省はガイドラインを徹底させようとしていますが、泉佐野市は『アマゾンギフト券100億円還元閉店キャンペーン』を実施!
- 泉佐野市と総務省のバトルは、果てしない泥仕合の様相を呈してきています…。
今回の件を調査して見て、改めて思ったことは『政治って大事!』ということです。
泉佐野市のケースでは、慢性的な赤字体質が続いて、どうにもならない段階まで悪化させてしまったために、回復施策もかなり無理をしなければならなかったことが分かります。
『お金節約.com』では、できるだけ「お得な情報」の提供につとめて、政治からは一定の距離を保ちたいと考えているのですが、自分自身の市民生活はそうは行きません。
今年は統一地方選挙の年ですし、地方行政もしっかりチェックする必要がありますね!改めてそう思いました。