地震などの天災とか、突然の事故とか、人生何があるか分かりません。
想像したくない事態ですけれども、万が一収入が途絶えてしまったら?
それでも、お金が無いから病院で診療を受けられないというのは誤解です。
生活困窮者のための、無料低額診療事業があり、無料または低額な料金で診療を受けることが出来るんです。
万一に備えて知っておきたい無料低額診療制度について解説します!
無料低額診療事業は生活保護ではカバーされない生活困窮者のための制度
無料低額診療事業とは、低所得者や特殊事情により医療を受けにくい人に対して、無料もしくは低額で医療行為を行う制度です。
ポジション的には生活保護制度との中間に位置していて、そもそも生活保護の対象外となる人も視野に入れている感じです。
医療費の自己負担比率【現役世代は3割負担】
日本は国民皆保険を実現しているので、病院で診療を受けた時に全額を自己負担する必要はありません。医療費の自己負担率は、いわゆる現役世代は3割負担。幼児と高齢者はより負担率が軽くなります。
現役世代は3割負担で済むとは言っても、その3割が支払えない…。そういう状況に陥ってしまう場合もあり得ますよね。
もっとも深刻な経済状況の場合は、生活保護を受給することになります。
無料低額診療事業と生活保護受給の違い
生活保護受給 | 医療費無料(ただし国民健康保険からは脱退) |
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無料低額診療事業 | 生活保護の受給対象外、もしくは諸事情により受給できない人を救済するための制度 |
生活保護を受給することになると、生活にさまざまな制限は発生しますけれど、生活保護法指定医療機関を受診すれば、医療費は無料になります。
とは言え、生活保護を受給できる要件を満たすことができない人もいるわけですよね…。
無料低額診療事業は、生活保護の受給対象外、もしくは諸事情により受給できない人を救済するための制度です。
無料低額診療事業の対象者
低所得者 | 生活保護基準の120%~150%程度 |
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生活保護の受給が困難な人 | ホームレス、DV被害者など |
生活保護の受給可能性が無い人 | 日本に住む外国人など |
無料低額診療事業の対象者は、大きく3つのパターンに大別できます。
- 一つには、生活保護を受けるほどではないけれども低所得水準にある場合で、目安としては、生活保護基準の120%~150%程度の水準となります。
- もう一つは、日本国民で生活保護を受ける権利は持っているけれど、生活保護の申請が困難な場合です。ホームレスとか、DV被害者などが該当します。
- 最後が日本に住む外国人が何らかの理由で生活困窮者になった場合です。生活保護は原則としては日本国民で無いと受給する権利がありません。
無料低額診療事業は、こうした生活保護では救済できない生活困窮者のための制度です。
【事例】千葉県の無料低額診療施設
無料低額診療事業を行っている病院・診療所は、すべての都道府県に最低一つはあり、とくに大都市圏では一定の数があります。
例えば、千葉県のホームページに掲載されている無料低額診療事業を行っている病院・診療所は、2019年6月19日時点で23か所。
決して多いとは言えないかも知れませんが、少な過ぎてまったく見つからないというレベルでも無いことが分かります。
無料低額診療制度を利用する手順
無料低額診療制度を利用する手順については、千葉県のホームページに掲載されている無料低額診療事業の一つ「船橋二和病院付属ふたわ診療所」の事例が参考になると思います。
経済的に困窮しても無料低額診療制度があるので、まずは相談してみて欲しい、という基本スタンスを取っていると言えるかと思います。
無料低額診療制度が適用できるかどうかは個々の事業者の判断
大前提として、無料低額診療制度の利用を希望した場合に、利用可能・不可能を決める判断基準は必ずしも明確ではない、ということは理解しておくと良いです。
ソーシャルワーカーが生活の状況を聞き、必要に応じて給与明細、年金の通知書、預金通帳などを確認したうえで、無料低額診療制度が適用できるかどうかを判断します。
【ふたわ診療所の事例】制度の対象と想定しているケース
- 病気や障害により一時的に収入がなくなり、医療費を支払うことが困難になった。
- 経済的に困って役所に相談に行ったが利用できる制度がないと言われた。
- 年金収入だけでは生活がままならず、医療費を支払うのが難しい。
- 「病院に行くのを我慢しないと生活できないから」というような言葉を周りから聞いた。
- 安定した収入が得られないため、生活に余裕がなく、病院に行くのを躊躇してしまう。
- 保険料が払えず、正規の保険証が手元にない。
(出典:船橋二和病院付属ふたわ診療所『無料定額診療について』より)
これを見ると、無料低額診療制度について、対象者をそれなりに幅広くとらえていることが分かります。
【ふたわ診療所の事例】まずはソーシャルワーカーや事務職員に相談
「船橋二和病院付属ふたわ診療所」の事例では、無料低額診療制度の利用を希望する人は、まずは病院や診療所の受付に申し出て欲しい、としています。
とにかくも、まずは相談してください、ということですね。
ソーシャルワーカーや事務職員に相談し、一定の条件を満たしていて制度を利用することが可能と判断された場合には、必要な書類を準備して申請書を提出する流れとなります。
【ふたわ診療所の事例】申請に必要な書類
- 給与明細など収入が確認できるもの。
- 家賃金額のわかるもの
- 預金通帳
- 各種保険証・手帳など
- 生命保険などの契約書
- 年金送付通知書(年金受給者)
- 外国人登録証
(出典:船橋二和病院付属ふたわ診療所『無料定額診療について』より)
これらの書類により、相談内容に虚偽が無いことを確認する流れです。
【ふたわ診療所の事例】軽減される医療費の水準
- 1.無料低額診療
無保険で生活困窮の状態にある場合等になります。- 2.低額診療
医療費の一部負担金を支払うことで生活維持に困難が生じる場合等になります。
一部負担金の全額もしくは一部免除となります。
健康保険が適用される診療範囲が対象です。世帯の所得を計算し、生活保護基準比で判定します。- 生活保護基準 120%未満・・・一部負担金の全額
生活保護基準 120%未満140%以上・・・一部負担金の5割減額
生活保護基準 140%以上150%未満・・・一部負担金の3割減額(出典:船橋二和病院付属ふたわ診療所『無料定額診療について』より)
健康保険が適用される診療範囲が対象となり、医療費の一部負担金(現役世代は3割負担)について、生活保護基準比で判断するとしています。
万一に備えて知っておきたい無料低額診療事業、まとめ
無料低額診療事業について解説してきましたが、いかがでしたか?
- 無料低額診療事業とは、低所得者や特殊事情により医療を受けにくい人に対して、無料もしくは低額で医療行為を行う制度です。
- ポジション的には生活保護制度との中間に位置していて、そもそも生活保護の対象外となる人も視野に入れています。
- 無料低額診療事業を行っている病院・診療所は、すべての都道府県に最低一つはあり、とくに大都市圏では一定の数があります。
- 無料低額診療制度の利用可能・不可能を決める判断基準は必ずしも明確ではない点はあらかじめ理解しておきましょう。
- 無料低額診療制度の利用を希望する場合、まずは実施している病院・診療所に相談をすることから始まります。
無料低額診療事業などの社会のセーフティネットは、できることなら利用したくはないのが本音ですよね。
それでも、万一の不測の事態に備えて、救済制度があることを知っておくことは重要だと思います。
本当に困った事態に陥ったら、無料低額診療制度のことを思い出してみてくださいね。