2019年7月16日から、株式等の決済期間が1営業日短縮化されます。
決済期間が短くなることは、基本的に全ての市場参加者にとってプラスに働きます。
とくに株主優待とか配当を狙っている個人投資家にとっては、大きなメリットとなる可能性があるんです。
7月16日から株式取引の決済期間が1営業日短縮されることについて解説します!
(冒頭画像の出典:日本証券業協会『株式等の受渡日が1営業日早まります』より)
日本における「株式等の決済期間の短縮化」の流れ
株式等の決済期間を短縮化が進んでいるのは、基本的に全ての市場参加者にとってメリットがあるからです。
株式等の決済期間短縮化は世界的な流れですが、とくに日本における議論の流れを解説しておきますね!
株券はすでに電子化(ペーパーレス化)が完了
- 2004年6月27日「社債、株式等の振替に関する法律」公布
- 2009年1月5日「社債、株式等の振替に関する法律」施行
まず大前提ですが、現在、株券はすでに電子化(ペーパーレス化)されています。
上記のような法的な整備を進めて、現在では、株主の権利(株主総会での議決権行使、配当金の受け取り等)は、証券会社などの金融機関で電子的に管理されている状態です。
もちろん株券の電子化には、将来的な取引の迅速化などの狙いも含まれていました。
株式取引などの特徴として、取引日と受渡日に一定のタイムラグがあるのですが、できるだけそのタイムラグを短くしたいという課題があったのですね。
「取引日(約定日)」と「受渡日」の違い
- 取引日(約定日):株式の買い注文や売り注文が成立した日
- 受渡日:売買の決済をする日
株券などが電子化されていると言っても、取引後すぐに受け渡しまで完了する訳ではなく、一定のタイムラグを要します。
日本では、証券等の売買取引の成立を、約定(やくじょう)と呼んでいます。
取引日(約定日)とは、株式などの売買注文が成立した日のことで、売買行為自体はこの時点で確定しています。
その後、一定のタイムラグがあり、受渡日に実際の売買決済が行われます。売買取引の成立と、実際の売買決済が同時に行われているわけでは無いのですね。
決済期間とは、取引日(約定日)と受渡日の間にある一定のタイムラグのことを指しています。
決済期間を短縮することのメリット
投資家の立場としては、取引日(約定日)に資金は引き落とされるけれども、株主としての権利などが発生するのは受渡日まで待たなくてはなりません。
証券会社側としては、取引が成立していても、受渡日までは未決済残高として残り続けるという決済リスクが残ります。
事務手続きが滞りなく行われる必要はあるのですけれども、決済期間を短縮することで、こうしたデメリットが軽減されることにつながります。
決済期間の短縮化は、全ての市場関係者にとってメリットになるんです!
世界標準は「T+2」ルール
取引から受け渡しまでの一定のタイムラグは、日本では、取引の3営業日後という状態が続いていました。
取引(Trade:T)からプラス何日後という表現が用いられるのですが、日本の現状は「T+3」となっています。
一方、決済期間の短縮は世界的なトレンドで、世界の主要な株式市場では、「T+2」が標準的になっています。
決済期間を短縮化することのメリットは大きく、日本証券業協会では2015年7月に「株式等の決済期間の短縮化に関する検討ワーキング・グループ」を設置して検討を開始。
議論・検討の結果、2019年7月16日から決済期間を短縮化することに決まりました。日本も、「T+2」ルールに移行することになるんです。
証券会社では既に告知を開始
証券会社などでは、既に告知を開始しています。
画像はSBI証券の事例ですが、全ての証券会社で同様の告知を行っているはずですので、ご自分が口座を開設している証券会社の解説ページに目を通しておくことをおすすめします!
個人投資家のメリットは「権利付き最終売買日」が後ろ倒しされること
何となく早くなることは良いようには感じますけれど、個人投資家にとってはどのようなメリットがあるのでしょうか?
株式等の決済期間が短縮化されることで、個人投資家にとって、具体的にどのようなメリットがあるのか?その点について解説します。
「権利付き最終売買日」が1営業日後ろ倒しとなります
個人投資家にとって主なメリットは、「権利付き最終売買日」が1営業日後ろ倒しされることです。
とくに株主優待や配当を得ることを目的とする場合、企業の株式名簿に名前が記載されている必要があります。こうした株主としての権利が確定する日(権利確定日)は、通常、決算期末にあたります。
取引日(約定日)から受渡日までに一定のタイムラグがあることを想定すると、決済期間を考慮した「権利付き最終売買日」が計算できますよね。
決済期間が短縮化されたことで、この「権利付き最終売買日」が1営業日後ろ倒しとなるんです!
たった1営業日の短縮化とは言っても、実際の取引に与える影響は少なくありません。それを実施初月の、2019年7月の例で見てみましょう。
新ルール初月の「権利付き最終売買日」の試算例
日付 | 7月26日 | 7月27日 | 7月28日 | 7月29日 | 7月30日 | 7月31日 |
曜日 | 金曜日 | 土曜日 | 日曜日 | 月曜日 | 火曜日 | 水曜日 |
従来ルール | 権利付き 最終売買日 |
権利落ち日 | 権利確定日 | |||
新ルール | 権利付き 最終売買日 |
権利落ち日 |
2019年7月31日に決算期末・権利確定日を迎える企業の事例で考えてみましょう。
これまでの「T+3」ルールの場合は、権利付き最終売買日は3営業日前の7月26日(金)となります。土日が営業日に含まれないことを考えると、リスクを承知で早めに判断する必要に迫られていたわけです。
一方、7月16日以降の「T+2」ルールの場合は、権利付き最終売買日は2営業日前の7月29日(月)となります。株式市場に影響を与えるような事件が発生していないか、週末の状況を見定めてから判断することができるのです。
もちろん投資は自己責任なのですけれど、リスク要因について、じっくり見極める時間的な余裕が生じるというメリットは大きいでしょう。
新ルール初月の「権利落ち日」の試算例
「権利付き最終売買日」の翌日は、一般に「権利落ち日」と呼ばれています。
既に優待・配当を受ける権利は確定しているので、例えば、買った株を売却したとしても、優待・配当を受ける権利が失われることはありません。
「権利落ち日」は、フリーハンドとなり、次の売買を考えることができるタイミングということですが、決済期間の短縮化に伴って「権利落ち日」も1営業日スライドします。
投資スケジュールを立てる際には、この点も念頭に置くようにしましょう!
7月16日から株式取引の決済期間が1営業日短縮化!【株主優待とか配当を狙う個人投資家は必見】まとめ
7月16日から株式取引の決済期間が1日短縮されることについてお伝えしてきましたが、いかがでしたか?
- 2019年7月16日から、株式等の決済期間が1日短縮化されます。
- 株式等には取引日(約定日)と受渡日に一定のタイムラグがあり、このタイムラグを決済期間と呼んでいます。
- 決済期間については、取引(Trade)からプラス何日という考え方で、「T+x」という表現がなされます。
- 世界の主要な株式市場では「T+2」ルールでしたが、日本ではまだ「T+3」ルールという状況がありました。
- 日本の株式市場が世界標準に追いつくことで、個人投資家にも「権利付き最終売買日」に余裕が生まれるメリットが生じます。
年金問題などで資産運用の必要性を改めて認識した人も多いと思います。株式取引を始めてみようと思う人も増えてくるかもしれないですね!
2019年7月16日から株式等の決済期間が1日短縮化されることは、基本的には個人投資家にとって(全ての市場参加者にとって)メリットになり得ます。
とは言っても、自分の資産運用が成功するかどうかはまた別問題ですから…。
ルールの変更などはしっかり把握したうえで、十分考慮のうえ、投資活動を行ってくださいね♪