お金の基礎知識 PR

サンマをこれからも食べて行くことができるの?【北太平洋漁業委員会で漁獲量制限に大枠合意】

サンマをこれからも食べて行くことができるの?
記事内に商品プロモーションを含む場合があります
編集長より子
編集長より子
『お金節約.com』編集長「より子」です。

サンマといえば、秋の味覚として食卓には欠かせない魚ですけれど、毎年のように不漁が伝えられていますよね…。

このままだと、サンマを食べられなくなる!?

そんな危機感もあって、サンマの漁獲量を制限しようという動きが強まっています。

北太平洋漁業委員会(NPFC)の年次会合で、サンマの漁獲量制限についてやっと合意しましたけれど、効果は限定的という声もあります。

サンマの漁獲量制限を巡る問題について解説します!

サンマの漁獲量が問題化する背景にある2つの要因

サンマの漁獲量制限が問題となっている背景には、2つの要因があります。

1つには、かつてはほぼ日本だけが行っていたサンマ漁を、日本以外の国も盛んに行うようになってきていること。

もう1つには、各国のサンマ漁によってサンマの資源量(生息数)そのものが減少してきていることです。

この2つの要因をもうちょっと詳しく解説しますね。

サンマは北太平洋に広く生息する大衆魚

サンマは北太平洋に広く生息しています。とくに日本近海が漁場に適していて、昔から秋の味覚の代表的な存在として親しまれてきました。

近海で大量に獲れるため価格も安い、いわゆる大衆魚で、庶民の食卓には欠かせない存在だったわけですね!

生物学的には寿命が短いことも特徴です。寿命は長くても2年程度で、多くの場合は0歳~1歳魚が漁獲されている状況です。

ブリなどが6~7年寿命があることと比べても明らかに短命で、養殖もほとんど行われていません。

サンマの漁獲量は10年で約3分の1に減少

水産庁がサンマの漁獲量の推移を公開していますが、ここから分かることは次のような流れです。

  1. ほぼ日本だけがサンマを獲っている状況が長く続いていたけれど
  2. 2000年以降、日本以外の各国もサンマ漁を急速に拡大して
  3. 日本の漁獲量は2000年代初頭の30万トン水準から10満トン水準に下落

ひとことで言うと、サンマ漁の国際化が進むなかで、日本の占めるウェイトが低下してきているということですね。

サンマの資源量(生息数)もほぼ半減

各国でサンマ漁が盛んになるなかで、サンマの資源量(生息数)が減っていることが分かってきています。

2000年代初頭の500万トン水準のところ、2018年の推計値は205万トン。記録的な不漁だった2017年は100万トン水準にまで下落しています。

サンマの資源量(生息数)が少なくとも半減している、ということは確かなようです。

北太平洋漁業委員会(NPFC)でサンマの漁獲量規制導入を議論

北太平洋漁業委員会(NPFC:North Pacific Fisheries Commission)は、北太平洋の海洋生態系を保護しつつ、条約水域における漁業資源の長期的な保存及び持続可能な利用の確保を目的とする「北太平洋における公海の漁業資源の保存及び管理に関する条約」(北太平洋漁業資源保存条約)に基づいて設立された地域漁業管理機関です。
我が国の漁船は本条約の適用水域において、サンマ、アカイカ等を対象とした漁業を行っています。
(出典:水産庁「北太平洋漁業委員会(NPFC)第5回年次会合」の結果について)

2015年に、サンマなど北太平洋の漁業資源の問題を協議する国際的な会議体として、北太平洋漁業委員会(NPFC)が設立。

参加国は、日本、カナダ、ロシア、中国、韓国、米国、バヌアツ、台湾の、8ヶ国・地域となっています。

サンマの漁獲量制限を巡る議論は、この北太平洋漁業委員会(NPFC)を舞台に行われてきたのですが…。ものすごく難航してきたのです。

第3~4回年次会合は中国の反対で規制導入できず

サンマの漁獲量規制が本格的に議論されるようになったのは、2017年開催のNPFC第3回年次会合からです。

  • 第3回年次会合:日本が各国別の数量を定めた漁獲枠導入を提案するも合意できず
  • 第4回年次会合:日本が数量明記を避ける修正案を提案するも合意できず

サンマの漁獲枠導入については、中国とバヌアツが資源量が把握できていないとして反対。

サンマの漁獲可能量などを推計したうえで、改めて今年の第5回会合に臨む流れとなっていました。

第5回年次会合にて大枠での漁獲量規制を初めて導入

今回開催された北太平洋漁業委員会(NPFC)の第5回会合では、サンマの漁獲量規制を大枠で導入することに初めて合意が成立しました。

  • 漁獲枠を年55万6250トンとすること
  • そのうち公海を年33万トンに設定すること

これが数量制限の内容ですが、『年55万6250トン』という数量は、ちょっと上のグラフを見てもわかるように、現状のサンマ漁獲量(2018年実績約44万トン)以下の水準です。

今回の合意が、サンマの漁獲量削減に直接結びつくことは無い、ということなんですね。

とにかくもサンマの漁獲量を制限する枠組みを作ることを優先した形で、今後、規制のなかみを詰めていくことで、実効性を持たせて行こうという考えです。

サンマの漁獲量制限交渉は、これからが本番ということになりますね…。

サンマをこれからも食べて行くことができるの?【北太平洋漁業委員会で漁獲量制限に大枠合意】まとめ

サンマの漁獲量制限の動きについて解説してきましたが、いかがでしたか?

今回紹介したこと
  • 2019年7月16日~18日にかけて開催された北太平洋漁業委員会の年次会合にて、サンマの漁獲量制限枠を導入することが決定。
  • サンマ漁については、ほぼ日本だけが行っている状況から、域内各国で行っている状況に変化してきています。
  • 各国がサンマ漁を行うなかで、サンマの資源量(生息数)も減少。2000年代初頭から半減以下の水準に。
  • 今回の合意は、現状の漁獲量を上回る水準での総枠設定なので、サンマの資源保護について実質的な効果はありません。
  • サンマの漁獲量を制限する枠組みを作ることを優先した形で、今後、規制の中味を議論して実効性を持たせて行くことになります。

過去には日本自身も乱獲と言われても仕方がない状況があったこともあり、漁業資源の規制については、かなり慎重な議論の進め方をせざるを得ない所があるのでしょう。

今回のサンマの漁獲量規制についても、毎年一歩ずつ前進して、やっと大枠の合意にこぎつけたかたちです。相当に段階を踏んでいる印象があります。

今後は各国の漁獲量規制枠を検討することになり、それぞれが痛みを感じる領域に入っていくわけですから、これで一安心とはとても言えない状況ですね…。

サンマの漁獲量規制については、今後も交渉の状況を見守って行きたいと思います。

すき家のうな丼
ウナギの価格は2019年にどう推移するの?【令和時代も鰻を食べ続けることができるのか】鰻(うなぎ)の価格が高騰していますね。ウナギは完全養殖が実現されておらず、稚魚の段階で乱獲してしまう問題がありますが、国際間で協調する枠組み作りも難航しています。令和時代も鰻を食べ続けることができるのか?ウナギを巡る諸問題について解説します。...