成田市中央公民館主催の教養講座『はじめての萬葉集』を受講してきたのですが…。
最後に『萬葉集と令和』と題して、新元号令和の出典ともなった萬葉集の該当部分についての講演会が開催されました!
新元号『令和』についての専門家の見解など、非常に興味深い内容でした。
成田市中央公民館が主催する講演会『萬葉集と令和』の受講レポートです!
『萬葉集と令和』は教養講座の最終回的位置づけ
2019年9月22日、成田市中央公民館が主催する講演会『萬葉集と令和』が開催されました。
独立した講演会でもあるのですが、7月27日から合計4回に渡って開かれた教養講座『はじめての萬葉集』の最終回的な位置づけでもありました。
教養講座『はじめての萬葉集』は全4回に渡って開催
教養講座『はじめての萬葉集』は、7月27日から全4回に渡って開催されました。
最終的に、9月22日(日)に開催される講演会『萬葉集と令和』につながる流れで、すべてを合わせると合計10時間超の講義時間となります。
教養講座『はじめての萬葉集』に参加した経緯については、次の記事を参考にして下さい。
講演会『萬葉集と令和』は成田市中央公民館の講堂で開催
教養講座・講演会ともに中央公民館での開催でしたが、成田市中央公民館は現在でも台風15号被害の対応を継続中です。
とは言っても、相当に落ち着いては来ている印象ですね。
教養講座は4回とも視聴覚室での講義でしたが、講演会は講堂での開催です。
講演会『萬葉集と令和』の基本情報
講演会名 | 萬葉集と令和 |
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開催日時 | 2019年9月22日(日) 13:30~16:00 |
講師 | 岩田芳子先生 |
定員 | 80人 |
受講費 | 無料 |
講師は教養講座から引き続き、日本女子大学の岩田芳子先生でした。
難解にもなりがちなテーマを、分かり易く解説していただきました。非常に面白い教養講座・講演会でした!
会場は8割方埋まっていた感じでしたが、皆さん満足されたのではないでしょうか。
『萬葉集と令和』で解説された新元号の意味
講演会『萬葉集と令和』では、多方向に掘り下げられたお話で、とても興味深い内容でしたが、やはり最大のテーマは新元号「令和」をめぐる部分です。
新元号「令和」の意味について、改めて理解を深めることができました!
「令和」の出典をめぐる議論
「初春令月、気淑風和」
(出典:『萬葉集』巻五「梅花歌三十二首序」より)
新元号「令和」の出典が、『萬葉集』巻五「梅花歌三十二首序」に由来するものであることは、既に発表されている通りです。
中国後漢の文人・張衡(78年-139年)の賦(漢籍)『帰田賦』に類似する表現が見られることが指摘されていますが、萬葉集が読まれた当時、漢籍を学ぶことはごく当然のことであったということです。
そもそも萬葉集の原文は全て漢文ですが、その言葉を表す漢字を当てる際に、既存の同音あるいは類似音をもつ字を借りて表記する仮借(かしゃ)という手法を学ぶなかで、漢籍に通じていることは必須であったということですね。
序文の作者には、大伴旅人説、山上憶良説などいくつかの説があるようですが、いずれにしても『帰田賦』が念頭にあった可能性は非常に高いようです。と言っても、当時の歌の世界では原典を意識しつつ、その上に自分の表現を重ねて構築していくことはごく当然の行為だったということです。
先人を参考に自分の表現を築いていく、それが何世代にもわたって幾重にも積み重なっていく…。というのは、現代の芸術全般でもほぼ共通することのように思われました。
結論としては、作者の念頭に『帰田賦』があったことは間違い無いと思われますが、「令和」の出典を萬葉集とすることには何ら問題が無いと、そのように理解しました。
政府公式見解には「学問的には」微妙な間違いも
これは「万葉集」にある「初春の令月にして 気淑(よ)く風和(やわら)ぎ 梅は鏡前の粉(こ)を披(ひら)き 蘭(らん)は珮後(はいご)の香を薫(かおら)す」との文言から引用したものであります。そして、この「令和」には、人々が美しく心を寄せ合う中で文化が生まれ育つという意味が込められております。
「万葉集」は、1200年余り前に編さんされた日本最古の歌集であるとともに、天皇や皇族、貴族だけでなく、防人(さきもり)や農民まで、幅広い階層の人々が詠んだ歌が収められ、我が国の豊かな国民文化と長い伝統を象徴する国書であります。(以下略)
(出典:首相官邸ホームページ 平成31年4月1日『安倍内閣総理大臣記者会見』より)
新元号「令和」の意味についても興味深い話がありました。
萬葉集が詠まれた当時、漢字の意味については、中国後漢の許慎が記した現存する最古の漢字辞典『説文解字』が参考にされたであろうということです。『説文解字』によると、
- 令:もとは人を集めて従わせるという意味でしたが、後に「良い」の意味でも用いられるようになった。
- 和:気持などがしっくり合う。おだやか。
つまり、「令和」とは、『よくととのって、おだやかな(やわらいだ)』という意味と解されるということですね。
また、政府発表には、学問的には微妙な間違いも散見されるようです…。
- 「令」に、萬葉集が詠まれた当時、美しいという意味は無い。
- 「萬葉集」は、日本最古の歌集では無い。「現存する」日本最古の歌集という表現はできる。
- 「国書」という表現が、研究者の間で用いられることは無い。
この辺りのお話は、非常に興味深く拝聴いたしました!
成田市中央公民館が主催する講演会『萬葉集と令和』を受講してきました!まとめ
成田市中央公民館が主催する講演会『萬葉集と令和』についてお伝えしてきましたが、いかがでしたか?
- 2019年9月22日、成田市中央公民館が主催する講演会『萬葉集と令和』が開催されました。
- 成田市中央公民館主催の教養講座『はじめての萬葉集』(全4回)の最終回的な位置づけでもあります。
- 成田市中央公民館は現在でも台風15号被害の対応を継続中ですが、8割方席は埋まっている状況でした。
- 「令和」の出典については、漢籍の影響は大きいけれど、萬葉集を出典とすることに問題は無いように理解しました。
- 一方で、政府公式見解には学問的には微妙な間違いも散見されるようです。
『萬葉集』は約1200年前に編纂されたものですが、萬葉集を学ぶに連れて、時間の捉え方がちょっと変わってきました。
1200年も昔というよりは、僅か1200年前と感じるようになったんですよね…。
文字も法律も中国から輸入して、その上に独自の文化や制度を築いていった飛鳥時代・奈良時代の日本。
いつの時代も問題は絶えないものですが、現代の課題を克服するためにも、しっかり外に目を開いておく必要はあるように感じます。
改めて、日本の歴史を振り返ってみたいと思いました!